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簾越し
「簾越し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
簾越しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
休めていた。 あるかなきかのそよ風が軒に釣り古した風鈴に忍びやかな音を伝えて、
簾越しにスーッと、汗ばんだ単衣の肌を冷かに撫でて行った。 神戸牧師はふと今朝程....
「家」より 著者:島崎藤村
かりに成る下女とが出たり入ったりして働いている。突当りの窓の外は直ぐ細い路地で、
簾越しに隣の家の側面も見える。 夕飯時に近かった。実は長火鉢の側に膳を控えて、....
「黴」より 著者:徳田秋声
て来る、顔の赤いいなせな頭などが突っかけ下駄で通って行くのが、窓の格子にかけた青
簾越しに見えた。 婆さんを紹介されると、笹村は、「どうぞよろしく。」と叮寧に会....
「一本の花」より 著者:宮本百合子
」 と印刷所の若主人を呼び出した。彼女のふっくりした、勝気らしい張りのある声が、
簾越しに秋風の通る殺風景な室に響いた。 「もしもし、十一時半の約束だのにまだ一台....
「余録(一九二四年より)」より 著者:宮本百合子
なくさめる。ぬるくなると、彼は、小さい餅なら一つずつ、大きなのは半分にして、車の
簾越しに投げ与えて通った。当時有名であったらしい。 彼の性格の一面が現れ、私に....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
た。 紗のようだと思ったのが、いつのまにか御簾《みす》になっている。 その御
簾越しにお浜を見ると、着物を畳んでいるというそのしぐさが、どうしても琴を弾じてい....
「死者の書」より 著者:折口信夫
日までは一度も、寺道場を覗いたこともなかった。父君は家の内に道場を構えて居たが、
簾越しにも聴聞は許されなかった。御経の文は手写しても、固より意趣は、よく訣らなか....
「源氏物語」より 著者:紫式部
方を可憐にばかりお思われになった。昔の鴛鴦の夢の跡の仏の御座になっている帳台が御
簾越しにながめられるのも院を物悲しくおさせすることであった。 「こんな儀式をあな....
「源氏物語」より 著者:紫式部
際人の目で見られたことの噂になるほうが迷惑になるとお思いになって、大将などにも御
簾越しでしかお逢いにならなかった。こんなふうに悲歎に心が顛倒したように人が言うで....
「血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
にして横になった。 蕾を持った春蘭が、顔の前に生えていて、葉の隙から栞の姿が、
簾越しの女のように見えていた。栞は、顔を上向け、また、何か想いにふけっているよう....
「死神」より 著者:岡崎雪声
がら、片門前の通を通って、漸く将監橋の袂まで来た。その頃|其処にあった蕎麦屋の暖
簾越しに、時計を見ると、まだ十時五分前なので、此処から三分もかかれば家へ帰れるの....
「薬前薬後」より 著者:岡本綺堂
しい日であった。昼のうちは陰っていたが、宵には薄月のひかりが洩れて、凉しい夜風が
簾越しにそよそよと枕元へ流れ込んで来る。 病気から例の神経衰弱を誘い出したのと....
「濹東綺譚」より 著者:永井荷風
》で生際の油をふきながら、中仕切の外の壁に取りつけた洗面器の前に立った。リボンの
簾越しに、両肌《もろはだ》をぬぎ、折りかがんで顔を洗う姿が見える。肌は顔よりもず....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
お人も」と、その数のうちに入れて、その人の顔を見ていた。 ――すると、廊ノ間の
簾越しに、ちらと、美しい人影が立ってここの書院を覗いたように思われた。それは高氏....
「大谷刑部」より 著者:吉川英治
いる。 簾の前に、刑部は坐った。――彼は、よほど親しい仲でない限りは、いつも、
簾越しに会うのを礼儀としていた。 「彦右か」 「はっ……」 樫原彦右衛門は、そ....