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「粗く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

粗くの前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
を出る。馬丁の吹き鳴らす喇叭の音が起る。薄い蓙を掛けた馬の身はビッショリと濡て、粗く乱れた鬣からは雫が滴る。ザクザクと音のする雪の路を、馬車の輪が滑り始める。白....
道標」より 著者:宮本百合子
。みんな学問をしているはずの人々だのに、その室内の空気はどこまでもかたくて、妙に粗くて、浸透性をかいている。伸子はテーブルにおいていたハンド・バッグを膝の上にお....
婦人と文学」より 著者:宮本百合子
年の六月、早稲田文学に「店の人」という須磨子の短篇がある。「雌蝶」よりはいくらか粗くて靭い筆致で、久江という「細かい縞の羽織に襟のかからない着物をグッと首に巻き....
婦人作家」より 著者:宮本百合子
る婦人の労働についてはっきり労働階級の立場から書きはじめている。彼女の筆致はまだ粗く、人間像の内面へまで深く迫った形象化に不足する場合もある。しかし現実生活に根....
女性の生活態度」より 著者:宮本百合子
。女の人の場合には、そのことが男と違う感じで自分に感じられましょう。何か、自分が粗くなって行くような、湿いを失って行くような、そう云う怖さを自分で感じるでしょう....
夏遠き山」より 著者:宮本百合子
が吹きまくるので、瓦屋根には出来ない。それでどの家も細かく葺いた木端屋根なのが、粗く而も優しい新緑の下で却って似合うのだ。裏通りなど歩くと、その木端屋根の上に、....
死刑囚最後の日」より 著者:豊島与志雄
ろいだろう。しかし私はもう以前と同じ人間ではなかった。おおい布は灰色で手ざわりが粗く、毛布は貧弱で穴があいており、ふとん越しに下の藁ぶとんが感じられはしたが、そ....
痀女抄録」より 著者:矢田津世子
て、また額へ眼を戻した。 わたくしは、ふと、垂れ下った緋の房の先のほうが、糸が粗くなっていることに気が付いた。そこだけ、わずか糸の隙間が出来ている。房がわれて....
円太郎馬車」より 著者:正岡容
いい若い女の声が、耳もとでした。 ハッと圓太郎はわれに返った。色白の目鼻立ちの粗く美しいキリリとした女が、大太鼓の薄暗い傍らにスッと立っていた。ついこの間母親....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
ちた。 ばらばらばら! 火の粉かと見ると、こはいかに、大粒な雨が、一粒ずつ、粗く、疎に、巨石の面にかかって、ぱッと鼓草の花の散るように濡れたと思うと、松の梢....
穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
|米突以上は、雑木次第に減じ、ミヤマカンバ、ミヤマハンノキ、ミヤマナナカマド等の粗く生えたる土地、ここをぬけると上宮川原「信濃、上宮川原、嘉門次」、左の方数丁に....
審判」より 著者:カフカフランツ
るわけである。そして女のベッドが空なのは、女がおれのものであり、窓ぎわのあの女、粗くて重い布地の黒ずんだ着物を着た、あの豊満でしなやかで温かい肉体が、まったくた....
三国志」より 著者:吉川英治
利は得ている。 「この土地の長く栄えない原因は、二つの欠点があるからです。土質|粗く硬く、水はしおからくて飲むにたえません。もう一つの欠所は山野木に乏しく、常に....