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「粗朴〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

粗朴の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
の張出間があり、その部分の外壁だけは、薔薇色の小さな切石を膠泥で固め、九世紀風の粗朴な前羅馬様式をなしていた。勿論その部分は礼拝堂に違いなかった。けれども、張出....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
休息しても、まだ頭が痛いと云う。午後の汽車で、直ぐ大沼へ行く。 函館停車場は極粗朴な停車場である。待合室では、真赤に喰い酔うた金襴の袈裟の坊さんが、仏蘭西人ら....
雪之丞変化」より 著者:三上於菟吉
、ピタリと端坐した一松斎、道場の板の間に、つい一松斎の足下にひれ伏した雪之丞――粗朴剛健で、何等の装飾もない十間四面の、練技場。ガランとして人気《ひとけ》もない....
女の歴史」より 著者:宮本百合子
達の、最も高い段階に属する感情の一つである。未開人は責任の感情というものが極めて粗朴の状態におかれている。人間生活への思意が複雑明瞭になって来る度につれて、さな....
有島武郎の死によせて」より 著者:宮本百合子
ったのだ。 「此点は、私に性格の或類似からよくわかる。私の感情は、彼より単純で、粗朴で、同時に盲目な生命の力に支配されずに居ない強烈さを持って居る。従って、彼よ....
山越しの阿弥陀像の画因」より 著者:折口信夫
化を生じて居たものの分出と見ることが出来る。但中尊の相好は、金戒光明寺のよりも、粗朴であり、而も線の柔軟はあるが、脇士・梵天・帝釈・四天王等の配置が浄土|曼陀羅....
火と氷のシャスタ山」より 著者:小島烏水
りしていない、むしろ危ッかしいほど、柔脆の肉つきではあるが、楽焼の陶器のような、粗朴な釉薬を、うッすり刷いた赤る味と、火力の衰えた痕のほてりを残して、内へ内へと....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
い出していた。 ――お通。 が久しぶりに、彼の、荒々しくのみ働いている神経と粗朴な生活の中に、彼女のやさしい面貌が浮かんできた。 小柳生城のほうへ、お通が....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
者がこの人だとは思えなかったが) と、光悦の多芸多能の才に、いやその才よりも、粗朴な茶碗のような姿をしていて、実はその裡に隠している人間的な奥行の深さを――武....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
こと、おらあ一切知らねえぞ」 話が分ってみると、権之助なるこの若者は、いかにも粗朴な田舎漢で、最初の間違いは、その率直な美点からむしろ起ったものといえる。 「....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
った。 いつだったか。 本阿弥光悦の家で見た梁楷の栗鼠に落栗の図を観――その粗朴なうちに持つ王者の気品と、墨の深さを、いつまでも忘れなかったりしたこともある....
三国志」より 著者:吉川英治
愛弾していた故人の遺物である。一|掻すれば琴韻清越、多年|干戈剣戟の裡にも、なお粗朴なる洗心と雅懐を心がけていた丞相その人の面影を偲ぶに足るといわれている。 ....