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粗製
「粗製〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
粗製の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「梓川の上流」より 著者:小島烏水
ようやく川を渉る、足袋底がこそばゆいから、草鞋を釈《ほど》いて足袋を振うと、
粗製のザラメ砂糖のような花崗の砂が、雫と共に堕ちる。
このような川渉りを、幾回....
「ゴールデン・バット事件」より 著者:海野十三
だ。丘田医師はかねてヘロインを手にしてからというものは、パントポンの代りに、この
粗製品を使って世間を胡魔化していたことは、帆村の調査によって証拠だてられたところ....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
味に於いて、人形の新古や、値の高下や、そんなことを論ずるのはそもそも末で、どんな
粗製の今戸焼でもどこかに可愛らしいとか面白いとかいう点を発見したならば、連れて帰....
「蟹工船」より 著者:小林多喜二
夜業となると、ブッ続けに続けられた。「もう三年も生きれたら有難い」と云っていた。
粗製ゴムのような、死んだ色の膚をしていた。 漁夫の仲間には、北海道の奥地の開墾....
「柿の種」より 著者:寺田寅彦
紙は色が裏へ抜けていなかったから裏は赤くなかったのである。 そのころでもすでに
粗製のうその朱唐紙があって、そういうのは色素が唾液で溶かされて書物の紙をよごすの....
「感覚と科学」より 著者:寺田寅彦
「聞く器械」としての優劣の存在を許容するのもやむを得まい。高価な器械を持つ人と、
粗製の器械をもつ人との相違と本質的に同じとも言われる。多くのすぐれた器械の結果が....
「断水の日」より 著者:寺田寅彦
めを負うべきものは必ずしも製造者や当局者ばかりではない。 もしも需要者のほうで
粗製品を相手にしなければ、そんなものは自然に影を隠してしまうだろう。そしてごまか....
「黄金虫」より 著者:佐々木直次郎
薄めたものが、ときどき用いられる。すると緑色が出る。コバルトの※《ひ》(11)を
粗製硝酸に溶かしたものだと、赤色が出る。これらの色は、文字を書いた物質が冷却する....
「楢重雑筆」より 著者:小出楢重
ます、決して画品のいいものではありません、芸術としては価値|甚だ低いものですが、
粗製濫造から来る偶然の省略法や単化と、ガラスの味とが入交ってまた捨がたい味を作っ....
「異郷」より 著者:寺田寅彦
代に出来た俗な絵草紙である。天井の隅には拡げた日傘が吊してある。棚や煖炉の上には
粗製の漆器や九谷焼などが並べてある。中にはドイツ製の九谷まがいも交じっているよう....
「餅のタタリ」より 著者:坂口安吾
でもないし、近村の農家の餅でもない。なぜかというと、この餅は餅米のツブだらけで、
粗製乱造の賃餅だ。自家用にこんな
粗製乱造の餅をつくることはないものだ。私が犯人で....
「ある日の経験」より 著者:寺田寅彦
気がしたので、急いでもとの棚へ返した。 その下の棚に青い釉薬のかかった、極めて
粗製らしい壷が二つ三つ塵に埋れてころがっているのを拾い上げて見た。実に粗末なもの....
「音楽界の迷信」より 著者:兼常清佐
果は同じような事になるにちがいない。 ピアノがきまれば、その音はきまる。どんな
粗製のぼろピアノからでも、名人に叩かれたら美しい音が出るというのでは、ピアノの製....
「翻訳のむずかしさ」より 著者:神西清
の弊が生じるわけだ。もっともこれは、何も飜訳文芸に限った話ではない。需要の盛大が
粗製濫造の弊を伴《とも》なわないで済むのは、よほど文化の根づきの深い国のことだろ....
「書を愛して書を持たず」より 著者:小川未明
、商品であり、また今日の如く、大衆を顧客とするには、著者の趣味如何にかゝわらず、
粗製濫造も仕方のないことになるのです。 一方、人生の精神文化は、遅々として向上....