粘り[語句情報] »
粘り
「粘り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
粘りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
さん。」
お鳥は何か返事をした。それはやっと彼女の声に目を醒《さ》ましたらしい
粘り声だった。
「お母さん。お芳さんが見えましたよ。」
お鈴はほっとした気もち....
「或る女」より 著者:有島武郎
てて伏せながら、
「あの男はお前、ばかにしてかかっているが、話を聞いていると妙に
粘り強い所があるぞ。ばかもあのくらいまっすぐにばかだと油断のできないものなのだ。....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
。 ト押重って、木の実の生った状に顔を並べて、斉しくお妙を見送った、四ツの髯の
粘り加減は、蛞蝓の這うにこそ。 真砂町の家へ帰ると、玄関には書生が居て、送迎い....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
やおら立ち上がると、胴の間に降り積んだ雪を摘まんで、手のひらで擦り合わせて、指に
粘りついた飯粒を落とした。そして配縄の引き上げにかかった。 西に舂きだすと日あ....
「親子」より 著者:有島武郎
出されようとするのが剣呑にも気の毒にも思われた。 しかし父はその持ち前の熱心と
粘り気とを武器にしてひた押しに押して行った。さすがに商魂で鍛え上げたような矢部も....
「死の快走船」より 著者:大阪圭吉
ぎ、白鮫号をすっかり空にして自分達も降りてしまったわけだ。ところで、この茶褐色の
粘り気のある泡は、普通の潮や波の泡ではない。もっと複雑な空気中の、或いは水中の埃....
「河明り」より 著者:岡本かの子
の持って来方には、衰えてはいるようでも、下町の旧舗の商人の駆け引きに慣れた婉曲な
粘りと、相手の気の弱い部分につけ込む機敏さがしたたかに感じられた。 私は娘に対....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
どうでございましょう。これが直き近所の車夫の看板から、今しがた煙草を吸って、酒
粘りの唾を吐いた火の着いていたやつじゃございますまいか。 なんぼでも、そうまで....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
人差指がいつもよりも大層|脂漲って変な感じがした。若い尼の顔の上の脂が彼の指先に
粘りついたのかもしれない。それともまた彼の指先が尼の面の皮にこすられてすべっこく....
「明日」より 著者:井上紅梅
な汗が一粒々々にじみ出たので、彼女はこわごわさわってみると、膠のような水が指先に
粘りつき、あわてて小さな胸元でなでおろしたが何の響もない。彼女はこらえ切れず泣き....
「不周山」より 著者:井上紅梅
そのうちの幾つかは顔の下半部に雪のように白い毛をはやしており、それは海水のために
粘りついているが、尖った白楊の葉のようである。 「おやあ!」彼女は訝りかつ怖れて....
「画筆に生きる五十年」より 著者:上村松園
。己れの弱気に克って信念を強め、どうしたらよくなるか、この躓きはどこから来たかと
粘り強く研究して行きます。スラスラでき上がったものより、途中さまざまな失敗のあっ....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
馬鹿々々しい目に会って二葉亭は幾分か気を腐らせた。もともと初めから徳永商店に長く
粘り着いてる心持はなく、徳永を踏台にして他の仕事を見付ける意でいたのだから、日本....
「二葉亭追録」より 著者:内田魯庵
いのだが、儒教や武家の教養から文芸を雕虫末技視して軽侮する思想が頭の隅のドコかに
粘り着いていて一生文人として終るを何となく物足らなく思わした。ゴーゴリやツルゲー....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
、宿から持って来た「サイダー」を一口二口飲みながら上る。「サイダー」は甘味があり
粘りがあって極めて不味だ、かかる時は冷き清水に越すものはない、自然は山人に「サイ....