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「粘り気〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

粘り気の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
にもうそれ以上冷静を装ってはいられなかった。昔のようにどこまでも自分を失わない、粘り気《け》の強い、鋭い神経はもう葉子にはなかった。 「あなたは愛子を愛していて....
無名作家の日記」より 著者:菊池寛
まとまった書き出しに俺はまず気押されてしまった。ことに一句一句、蜘蛛の糸のように粘り気があって、しかも光沢のある文章が、山野一流の異色ある思想をぐんぐんと表現し....
親子」より 著者:有島武郎
出されようとするのが剣呑にも気の毒にも思われた。 しかし父はその持ち前の熱心と粘り気とを武器にしてひた押しに押して行った。さすがに商魂で鍛え上げたような矢部も....
死の快走船」より 著者:大阪圭吉
ぎ、白鮫号をすっかり空にして自分達も降りてしまったわけだ。ところで、この茶褐色の粘り気のある泡は、普通の潮や波の泡ではない。もっと複雑な空気中の、或いは水中の埃....
死者の書」より 著者:折口信夫
若人たちは茎を折っては、巧みに糸を引き切らぬように、長く長くと抽き出す。又其、粘り気の少いさくいものを、まるで絹糸を縒り合せるように、手際よく糸にする間も、ち....
二つの途」より 著者:豊島与志雄
女は急いで痰吐を取り上げた。それから枕頭のハンケチで彼の顔を拭いてやった。額には粘り気のある汗が出ていた。それを拭き取ると、氷嚢をよくあてがってやった。 「苦し....
幻の彼方」より 著者:豊島与志雄
きく口を開いて泣き立てたりした。小指の先をくわえさせると、生温《なまあったか》い粘り気のある唇でちゅっちゅっと吸った。しまいには焦れだした。 「お可愛そうですよ....
明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
殴られたりしてカモ七がノビたり、顔を腫らしたり、骨を折ったりしたが、カモ七の骨は粘り気が強いらしく、じき治ってしまう。山腹の畑の方にも小屋をつくって、忙しくなる....
植物一日一題」より 著者:牧野富太郎
に入れ、また所によってはキツネアザミ、ホクチアザミなども用いられる。今日では餅に粘り気の多い糯米を用いるからそんな繋ぎは入用がないようだが、昔は多分|粳《ウルチ....
鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
は減るのを慣れというそうで、これなどは慣れの甚しいのでしょう。 そのために硬く粘り気のある黄楊を用いるようになりましたが、産地によって硬軟の差があるようにも聞....
「黒死館殺人事件」序」より 著者:甲賀三郎
怪物である。江戸川君の妖異と小栗君の妖異にはハッキリ区別があり、江戸川君が一流の粘り気のある名文で妖異の世界に引込んで行くのに反し、小栗君はむしろ晦渋と思われる....
五重塔」より 著者:幸田露伴
大きな眼を湿ませて聴いてくれたか嬉しいやい、と磨いて礪いで礪ぎ出した純粋江戸ッ子粘り気なし、一でなければ六と出る、忿怒の裏の温和さもあくまで強き源太が言葉に、身....
鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
にたえ、恥をしのび、首を斬られる最後の一瞬まで、生きて命をまっとうしようともがく粘り気のあるところに、隠密の本分と、かれらの誇りがある。その辺はなみの武士のいわ....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
と、左に折れて岳樺や深山榛の繁った尾根をひたすらに急ぎ登った。朽葉の残骸を止めた粘り気のある黒土は、たっぷり水を含んでつるりとよく滑る。一条の細径が右に岐れて二....