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糠雨
「糠雨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
糠雨の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
案内をひろげる。雨は斜《なな》めに降る。 古い京をいやが上に寂《さ》びよと降る
糠雨《ぬかあめ》が、赤い腹を空に見せて衝《つ》いと行く乙鳥《つばくら》の背《せ》....
「初秋の一日」より 著者:夏目漱石
汽車の窓から怪しい空を覗《のぞ》いていると降り出して来た。それが細《こま》かい
糠雨《ぬかあめ》なので、雨としてよりはむしろ草木を濡《ぬ》らす淋《さび》しい色と....
「妖術」より 著者:泉鏡花
、 「貴下、濡れますわ。」 と言う。瞳が、動いて莞爾。留南奇の薫が陽炎のような
糠雨にしっとり籠って、傘が透通るか、と近増りの美しさ。 一帆の濡れた額は快よい....
「海異記」より 著者:泉鏡花
をおさえたのである。 六 「晩飯の菜に、塩からさ嘗め過ぎた。どれ、
糠雨でも飲むべい、とってな、理右衛門どんが入交わって漕がしつけえ。 や、おぞい....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
子の久三は学校へでも往ったのであろ、姿は見えぬ。
一切の人と物との上に泣く様な
糠雨が落ちて居る。
あゝ此家も到頭潰れるのだ。
二
今は二....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
暑かりそうな処を、身に沁みるほどに薄寒い。…… 木の葉をこぼれる雫も冷い。……
糠雨がまだ降っていようも知れぬ。時々ぽつりと来るのは――樹立は暗いほどだけれど、....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
い。 陰気な、鈍い、濁った――厭果てた五月雨の、宵の内に星が見えて、寝覚にまた
糠雨の、その点滴が黴びた畳に浸込む時の――心細い、陰気でうんざりとなる気勢である....
「化鳥」より 著者:泉鏡花
ちがひやりとして、冷たい風が頬を撫でた。 その時仮橋ががたがたいって、川面の小
糠雨を掬うように吹き乱すと、流が黒くなって颯と出た。といっしょに向岸から橋を渡っ....
「子を奪う」より 著者:豊島与志雄
雨戸を一枚開いて、庭へ下りていった。冷たい夜の空気が額を撫でた。空を仰ぐと細かな
糠雨が、殆んど分らない位に少し落ちていた。植込みの影が魔物のように蹲っていた。何....
「反抗」より 著者:豊島与志雄
の日のことを、彼は縋りつくようにして想い起した。 二 それは、朝から
糠雨の降る佗しい日だった。周平はまた終日、このまま学業を止したものかどうかと、数....
「秋の幻」より 著者:豊島与志雄
うに梅雨のような雨が降った。それは、空から落ちて来るのではなくて、地から舞い上る
糠雨のようであった。往来には深い泥濘が出来、家の中はじめじめしていた。村の人達は....
「初秋海浜記」より 著者:豊島与志雄
物を伏せたままにして、軒端の露の雫に耳を傾けていた。ぽたり……ぽたり……と、丁度
糠雨の降る時のような雫の音で、それが大きな波音の間々に、しめやかな釘を打込んでい....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
いた。
彼は極度に疲れていたにもかかわらず、停車場までついて来た。細かな冷たい
糠雨《ぬかあめ》が音もなく落ちていた。停車場でクリストフは、金入れを開きながら、....
「鐘の声」より 著者:永井荷風
けるのも、こんな時である。 若葉の茂りに庭のみならず、家の窓もまた薄暗く、殊に
糠雨《ぬかあめ》の雫《しずく》が葉末から音もなく滴《したた》る昼過ぎ。いつもより....
「青い紐」より 著者:田中貢太郎
云って笑ったことを思いだした。随筆家の友人と話題を多く持っている壮い新聞記者が、
糠雨のちらちら降る中を外の方へ歩いて往った姿も浮んで来た。その二人は前晩泊った温....