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糸屑
「糸屑〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
糸屑の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
、驚いたような視線を洋一に集めた。と同時に神山は、派手《はで》なセルの前掛けに毛
糸屑《けいとくず》をくっつけたまま、早速帳場机から飛び出して来た。
「看護婦会は....
「玩具」より 著者:太宰治
していたようであった。しばらくしては立ちあがり、はたはたと着物の前をたたくのだ。
糸屑《いとくず》を払い落す為であったかも知れぬ。からだをくねらせて私の片頬へ縫針....
「政談月の鏡」より 著者:三遊亭円朝
こっそり金を呉れる奴が有るに違《ちげ》えねえ、彼様《あん》なけちな千代紙で貼った
糸屑を入れて置く箱ん中の巾着からザクリと金が出るんだからね」と此の勘次と云う奴は....
「旧主人」より 著者:島崎藤村
有ませんのです。奥様はそれを隠す場処に困って、机の引出へ御入れなさるやら、針箱の
糸屑の下へ御納いなさるやら、箪笥の着物の底へ押込んで御覧なさるやら、まだそれでも....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
を掴んだのであろう。そう思いながら更に見まわすと、その折れかかった下葉の裏に白い
糸屑が引っかかっていた。早朝に掃除をした者も、さすがにそこまでは気がつかなかった....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
年代にわたっているのであるから、筆跡も同一ではない。折れ釘のような男文字のなかに
糸屑のような女文字もまじっている。殆ど仮名ばかりで小児が書いたようなところもある....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
愛していた。あの女は俺の許婚だ。俺は死ぬほど愛していた。それだのに柵は俺のことを
糸屑ほどにも愛していなかった。あの女の恋人は夏彦であった。俺の弟を愛していたのだ....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
でもあったと見える、別の吸子に沸った湯をさして、盆に乗せるとそれを持って、前垂の
糸屑を払いさま、静に壇を上って、客の前に跪いて、 「お茶を入替えて参りました、召....
「蛍」より 著者:織田作之助
物も言わずにぺたりとそのそばに坐り、畳の一つ所をじっと見て、やがて左手で何気なく
糸屑を拾いあげたその仕草はふと伊助に似たが、きゅうに振り向くと、キンキンした声で....
「赤格子九郎右衛門の娘」より 著者:国枝史郎
である。 何とも云えぬ物凄い睨視! 何とも云えぬ殺伐な睨視! 貴殿の背中に白い
糸屑が! しかし勿論誰一人としてお菊の顔色の変わったことに不審を打とうとするも....
「京鹿子娘道成寺」より 著者:酒井嘉七
の白拍子に注がれていたのでございましょう。引抜きの時にも、半四郎は、手でまるめた
糸屑を、後見に渡さず、踊りの手にまぎらせて、天井に向って投げた、と申すではござい....
「深川女房」より 著者:小栗風葉
。 親子は裁縫の師匠をしているので、つい先方弟子の娘たちが帰った後の、断布片や
糸屑がまだ座敷に散らかっているのを手早く片寄せて、ともかくもと蓐に請ずる。請ぜら....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
りません。何か黒塗の処々|剥げた箱を使うのでしたが、その辺は綺麗に片附いていて、
糸屑など散らかっておりません。解き物などをするのにも、長いのは皆|揃えてしばって....
「春」より 著者:岡本かの子
苦になり気違いになったんだそうです。 加奈子に訊かれて、傍の男はまた説明した。
糸屑をしこたま膝に置いて、それを繋いでばかり居る女、遠くに一人兎の形を真似て両手....
「不在地主」より 著者:小林多喜二
前すぐ嫌な顔すべ。――阿部さんが小樽の工場にいた時なんて、工場の隅ッこさ落ちてる
糸屑一本持って外さ出ても、首になったりしたもんだどもな、女工さんの腹ば手当り次第....