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「糸底〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

糸底の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
草枕」より 著者:夏目漱石
」と余も簡単に賞《ほ》めた。 「杢兵衛はどうも偽物《にせもの》が多くて、――その糸底《いとぞこ》を見て御覧なさい。銘《めい》があるから」と云う。 取り上げて、....
道草」より 著者:夏目漱石
しに幾晩も繰り返された。 或時の彼は細君の鳩尾《みぞおち》へ茶碗《ちゃわん》の糸底を宛《あて》がって、力任せに押し付けた。それでも踏ん反《ぞ》り返ろうとする彼....
」より 著者:夏目漱石
団《ざぶとん》を敷いて、その前にちゃんと膳立《ぜんだて》がしてあった。 宗助は糸底《いとぞこ》を上にしてわざと伏せた自分の茶碗と、この二三年来朝晩使い慣《な》....
琴のそら音」より 著者:夏目漱石
頭《ひざがしら》の出そうなズボンの上で、相馬焼《そうまやき》の茶碗《ちゃわん》の糸底《いとそこ》を三本指でぐるぐる廻しながら考えた。なるほど珍らしいに相違ない、....
婦系図」より 著者:泉鏡花
ますよ。疾くお話しなさいなね。」 「そう、そう。いや、可い気なもんです。」 と糸底を一つ撫でて、 「その言分というのは、こうだ。どうも、あの魚屋も可いが、門の....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
痕があるに相違ない。熊城君、君は、ここにある壺を巧く割ってくれ給え」 そうして糸底の姓名と対照して割ってゆくうちに、とうとう二つが残されてしまった。「クロード....
伊太利亜の古陶」より 著者:宮本百合子
いましたな。ふうむ。――なかなかいい」 裏には、薄く琺瑯《ほうろう》のかかった糸底の中に茶がかった絵具で署名がしてあった。先の太く切れた絵具筆で無雑作らしく書....
田端日記」より 著者:芥川竜之介
やだよ。」と云って外へ出た。そうしたら、うしろで「いやあだ。」と云う声と、猪口の糸底ほどの唇を、反らせて見せるらしいけはいがした。 外濠線へ乗って、さっき買っ....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
ないので。……ふと心附いて、蟇のごとく跼んで、手もて取って引く、女の黒髪が一筋、糸底を巻いて、耳から額へ細りと、頬にさえ掛っている。 猛然として、藍染川、忍川....
叔父」より 著者:豊島与志雄
向った。 笹部は大きな手先で不器用に杯を受けた。親指の先を縁にかけ、四本の指で糸底を支えて、何杯もぐいぐいと飲んだ。いくら飲んでも平気らしかった。が中途でぴっ....
西林図」より 著者:久生十蘭
でした」 老人は、ふくよかな顔つきで、茶碗をとりあげると、掌のうえでゆっくりと糸底をまわしながら、 「すぐにもおたずねして、お詫びしたいと思いましたが、申そう....
平賀源内捕物帳」より 著者:久生十蘭
んでした」 路考は、茶を一口|啜《すす》って、掌《たなごころ》の上で薄手茶碗の糸底《いとぞこ》を廻しながら、 「……そうして二、三度お逢いした後のある朝、いつ....
随筆 新平家」より 著者:吉川英治
るい。 麓へ出ると、急に暖国を感じる。この辺の道ばたで見かけた蜜柑は、みな盃の糸底ほど小粒である。蜜柑というよりは、平安朝貴族の珍重した“非時香果”とか“橘”....
春の雁」より 著者:吉川英治
である。 「仕舞っておかないか。人が来るとよくないから」 杯を出した。 杯の糸底で秀八の冷たい指に、清吉の指が触れた。 「じゃあ、貰っておきます」 厚い帯....