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糸筋
「糸筋〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
糸筋の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「天主閣の音」より 著者:国枝史郎
り、女は壁の方へ辷って行った。そうして元の穴へ身を隠した。と音も無く壁が閉じた、
糸筋ほどの継目も見えない。 「おっ、畜生! 来やがったな!」どうしたものか香具師....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
らの願いであった。 静かなところで想い起こして見ると、あだかも目に見えない細い
糸筋のように、いろいろな思いがそれからそれと引き出される。郷里の方に留守居する継....
「千鳥」より 著者:鈴木三重吉
蒼ざめたお長は軒下へ蓆を敷いてしょんぼりと坐っている。干し列べた平茎には、もはや
糸筋ほどの日影もささぬ。洋服で丘を上ってきたのは自分である。お長は例の泣きだしそ....
「陸判」より 著者:田中貢太郎
を閉めて出て往った。朝になって朱は布を解いて見た。創口の縫い目はぴったりと合って
糸筋のような赤い痕が残っていた。 その時から朱の文章が非常に進んで、眼にふれた....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
るなり。その視線を趁うて望めば、北の方黄海の水、天と相合うところに当たりて、黒き
糸筋のごとくほのかに立ち上るもの、一、二、三、四、五、六、七、八、九条また十条。....
「浮雲」より 著者:二葉亭四迷
ッて叔母に詫言《わびごと》を言うも無念、あれも厭《いや》なりこれも厭なりで思案の
糸筋が乱《もつ》れ出し、肚の裏《うち》では上を下へとゴッタ返えすが、この時より既....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
た、眼鏡は曇って、一寸先を見透すのさえ大なる努力を要する、外套のおもてには、雨が
糸筋を引いていい加減に結び玉を拵えては、急にポロポロと転び落ちる、それが人間より....
「青年」より 著者:森鴎外
いる作品と密接の関係を有しているのだということを悟った。話しながら、事柄の経過の
糸筋を整理しているらしいのである。話している相手が誰でも搆わないらしいのである。....
「雁坂越」より 著者:幸田露伴
やがて娘は路――路といっても人の足の踏む分だけを残して両方からは小草が埋めている
糸筋ほどの路へ出て、その狭い路を源三と一緒に仲好く肩を駢べて去った。その時やや隔....
「世界の一環としての日本」より 著者:戸坂潤
義を何とか修理しようというのが、意識するとしないに拘らず、官僚と軍部との一貫した
糸筋なのである。 処が修理を必要とするものは相当ボロボロに傷んでいるものであっ....
「死者の書」より 著者:折口信夫
り寄せられる糸が、動かなくなった。引いても扱いても通らぬ。筬の歯が幾枚も毀れて、
糸筋の上にかかって居るのが見える。 郎女は、溜め息をついた。乳母に問うても、知る....
「自由人」より 著者:豊島与志雄
しくなった。周志淵は浙江財閥の一人であって、市内に潜居の様子だった。ところがこの
糸筋が、戦争末期に、陸軍憲兵隊に探知されたらしく、不安な情報がはいった。陸軍の方....
「山の人生」より 著者:柳田国男
帰し蛇の婿は刺された針の鉄気に制せられ、苦しんで死んだことになっている例が多い。
糸筋を手繰って窃かに洞穴の口に近づいて立聴きすると。親子らしい大蛇がひそひそと話....
「木綿以前の事」より 著者:柳田国男
もある。その損を気づかぬ故に後悔せず、悔いても詮がないからそっとしておくと、その
糸筋の長い端は、すなわち目前の現実であって、やっぱり我々の身に纏わって来る。どう....