紅塵[語句情報] » 紅塵

「紅塵〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

紅塵の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
牛肉と馬鈴薯」より 著者:国木田独歩
一念ひとたびかの願に触れると、こんなことは何でもなくなる。もし僕の願さえ叶うなら紅塵《こうじん》三千丈の都会に車夫となっていてもよろしい。 「宇宙は不思議だとか....
虞美人草」より 著者:夏目漱石
る。昔しは二十年の奥に引き籠《こも》って容易には出て来ない。漠々《ばくばく》たる紅塵のなかに何やら動いている。人か犬か木か草かそれすらも判然せぬ。人の過去は人と....
吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
》の茂った、昼でも人の通らない所を択《よ》ってあるいていると、いつの間《ま》にか紅塵万丈《こうじんばんじょう》の都会に住んでる気はなくなって、山の中へ迷い込んだ....
倫敦塔」より 著者:夏目漱石
まにやら雨となっていた。糠粒《ぬかつぶ》を針の目からこぼすような細かいのが満都の紅塵《こうじん》と煤煙《ばいえん》を溶《と》かして濛々《もうもう》と天地を鎖《と....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
その方面へ探しに行くらしかった。帰って来たときの疎髯を貯えた父の立派な顔が都会の紅塵に摩擦された興奮と、疲れとで、異様に歪んで見えた。もしかすると、どこかで一杯....
若き日の成吉思汗」より 著者:林不忘
方は蜒々《えんえん》雲に溶け入る抗愛山脈。寄せ手の軍馬の蹄が砂漠の砂を捲き上げ、紅塵万丈として天日昏し。 真っ赤な空の下、揉み合う軍兵の呶号、軍馬の悲鳴、銅鑼《....
残されたる江戸」より 著者:柴田流星
」と唄い初め唄いおさむる建前のあした、都の空にこの唄声の漸く拡ごり行けば、万丈の紅塵一時に鎮まりかえって、払いたまえともうす棟梁の上なる神幣、そよ風に翻って千代....
古狢」より 著者:泉鏡花
ね。」 と家内も云った。少し遠慮して、間をおいて、三人で斉しく振返ると、一脈の紅塵、軽く花片を乗せながら、うしろ姿を送って行く。……その娘も、町の三辻の処で見....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
大きく書いたボウル紙を首から下げていた。 ウチャストコワヤ街の方角から、深夜の紅塵にまじって支那少年の叫びがけたたましく流れてくる。 ちで・ちで! 夕刊売り....
半日ある記」より 著者:寺田寅彦
書生の群多くてうるさければ引きかえしパノラマ館裏手の坂を下る。こゝは稍静かなれど紅塵ようやく深く鉄道構内の煤煙風に迷うもうるさし。踏切を越えて通りかゝりし鉄道馬....
北京・青島・村落」より 著者:豊島与志雄
瓦屋根の上には埃がたまり、村落が擁する僅かな木立も、一杯埃をあびている。風のある紅塵の日には、凡てのものが息をひそめる。それらの村落を、例えば汽車の窓などから眺....
碑文」より 著者:豊島与志雄
、また自分のうちにも見出しました。 五年後の春さきのことでした。風もなく随って紅塵もないうららかな日、曹新が崔家へ戻って来ました。 崔家はよほど様子が変って....
上野」より 著者:永井荷風
鍾《アツ》ム。是ヲ東京上野公園トナス。其ノ勝景ハ既ニ多ク得ル事難シ。況ヤ此ノ盛都紅塵ノ中ニ在ツテ此ノ秀霊ノ境ヲ具フ。所謂錦上更ニ花ヲ加ル者、蓋亦絶テ無クシテ僅ニ....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
らに乗車してリオに向かう。ガタパラ行中、豊島氏が通訳の労をとられたるを謝す。車中紅塵の入り来たりて、衣服ために色を変ぜんとす。地質すべて赤土にして、乾燥すればた....
春風遍し」より 著者:小川未明
ります。 まだ若かった私は、酒場の堅い腰掛の端にかけて、暖簾の隙間から、街頭に紅塵を上げて走る風に眼を遣りながら独り杯を含んでいました。そして、迫り来る春昏の....