素樸[語句情報] » 素樸

「素樸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

素樸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
駈落」より 著者:佐左木俊郎
さんは柔和《にゅうわ》な微笑を浮かべて、こう述べたてながら二つの包みをほどいた。素樸《じみ》なメリンスの単衣であった。濃い水色に、白い二つの蝶を刺繍《ししゅう》....
薤露行」より 著者:夏目漱石
世に伝うるマロリーの『アーサー物語』は簡浄|素樸《そぼく》という点において珍重すべき書物ではあるが古代のものだから一部の小説....
夢十夜」より 著者:夏目漱石
うに見えた。漆《うるし》も塗ってなければ磨《みが》きもかけてない。極《きわ》めて素樸《そぼく》なものであった。 敵の大将は、弓の真中を右の手で握って、その弓を....
千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
母や姉に逢った。Oの母は肥満した、大きな体格の婦人で、赤い艶々とした頬の色なぞが素樸な快感を与える。一体千曲川の沿岸では女がよく働く、随って気象も強い。恐らく、....
子猫」より 著者:寺田寅彦
うは三毛とは反対に神経が遅鈍で、おひとよしであると同時に、挙動がなんとなく無骨で素樸であった。どうかするとむしろ犬のある特性を思い出させるところがあった。宅へ来....
雁坂越」より 著者:幸田露伴
しないでいるのは、一つはお浪の心安立からでもあろうが、やはりまだ大人びぬ田舎娘の素樸なところからであろう。 源三の方は道を歩いて来たためにちと脚が草臥ているか....
連環記」より 著者:幸田露伴
て或時思いも寄らず、吾が口を死人の口に近づけたのであろう。口を吸いたりけるに、と素樸に書いた昔の文は実に好かった。あさましき香の口より出来りける、とあるが、それ....
七重文化の都市」より 著者:野上豊一郎
した時はさすがに少し気味がわるかった。その実、物凄さは見かけ倒しで、恐らく気質は素樸なのだろうけれども、見た目にはたしかにバラーブラの印象を与えられた。ヌビア人....
光り合ういのち」より 著者:倉田百三
夫だ。 こんな平凡な話をなぜ私は書くのか。それはその時の愛し愛されている温い、素樸な空気の幸福がその後の私の人生にどんなに稀なものであったかを思うからだ。そん....
幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
はなかなかやかましかったが、気質は至って楽天的で、物に拘泥しない人であり、正直、素樸で、上下に隔てなく、弟子たちに対しても、家内同様、友達同様のような口の利き方....
幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
訪ねて来ました。 その人は、チョン髷を結って、太い鼻緒の下駄を穿き、見るからに素樸な風体、変な人だと思っていると、 「一つ彫刻を頼みたい」という。 「木で彫る....
武士を夷ということの考」より 著者:喜田貞吉
のことを解せしも、その生業としては主として狩猟にありしもののごとし。さればその性素樸勇悍にして、君に仕えては「海行かば水浸く屍、山行かば草生す屍、大君の辺にこそ....
炭焼長者譚」より 著者:喜田貞吉
ある。里人が次第に都の文化に親しみ、所謂「公民」となった後にも、山間の住民は依然素樸なる原始的に近い生活を営んでいるので、いつしか筋の違ったものの様に思われて来....
憑き物系統に関する民族的研究」より 著者:喜田貞吉
引いておかれた。 護法社。本殿の後に在り、毎年七月七日護法の祈を行ふ。其法は性素樸なる者を択び、斎戒潔浄せしむ。俗に之を護法実と謂ふ。七日に至り東堂の庭に居ら....
賤民概説」より 著者:喜田貞吉
彼らを招聘し、警固の任に当らせたものであった。奥羽の如くその地が僻陬であり、住民素樸にして、村方警固の必要も少く、各自相|扶けて葬儀その他の業をも執り行ったよう....