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紫紺
「紫紺〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
紫紺の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「葱」より 著者:芥川竜之介
小説を書き上げなければならないからである。
翌日の午後六時、お君さんは怪しげな
紫紺《しこん》の御召《おめし》のコオトの上にクリイム色の肩掛をして、いつもよりは....
「或る女」より 著者:有島武郎
えるような緋《ひ》の帯上げのほかは、ぬれたかとばかりからだにそぐって底光りのする
紫紺色の袷《あわせ》、その下につつましく潜んで消えるほど薄い紫色の足袋《たび》(....
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
んどうが好きになった。おオえエ花……」 花好きな民子は例の癖で、色白の顔にその
紫紺の花を押しつける。やがて何を思いだしてか、ひとりでにこにこ笑いだした。 「民....
「省線電車の射撃手」より 著者:海野十三
っていた。それから戸浪三四郎の隣りには、これはなんと水々しく結いあげた桃割れに、
紫紺と水色のすがすがしい大柄の絽縮緬の着物に淡黄色の夏帯をしめた二十歳を二つ三つ....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
大天井まで這い上ると、日輪は爛々として、頭上に高い、西の方乗鞍岳御嶽の大火山脈は
紫紺の森と、白雪と、赭岩の三筋に塗られ、南の方木曾山脈は、鳶色の上著に白雪の襟飾....
「のろのろ砲弾の驚異」より 著者:海野十三
知っている人は、ほんの僅かである。人はよく、博士が南京路の雑鬧の中を、擦れ切った
紫紺色の繍子の服に身体を包み、ひどい猫脊を一層丸くして歩いているのを見かけるが、....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
とその時まで、肩が痛みはしないかと、見る目も気の毒らしいまで身を緊めた裾模様の
紫紺――この方が適当であった。前には濃い紫と云ったけれども――肩に手を掛けたのは....
「若草物語」より 著者:オルコットルイーザ・メイ
やジョウと相談して、型をえらび、材料をととのえて、スリッパをつくりはじめました。
紫紺の布地に、しなやかな三色すみれの花をおいたのが、たいそうかわいいと、みんなが....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
ろと這いあがって来るものがある。見れば小さな蜥蜴である。背の色が美しい。碧緑とも
紫紺とも思われて、油を塗ったような光沢がある。胴体はいかにも華奢であるが、手足は....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
て、鼓草の花に浮べる状、虚空にかかった装である。 白魚のような指が、ちょいと、
紫紺の半襟を引き合わせると、美しい瞳が動いて、 「失礼を……」 と唯莞爾する。....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
。かれは強い決心を以って父の前に出ると、師直はいつの間にか寝道具を取り払わせて、
紫紺地に巴の模様を白く染め出した直垂を着て、敷皮の上に武者あぐらを掻いていた。も....
「皇海山紀行」より 著者:木暮理太郎
ている。ここは非常に眺望がよい、谷間はもう薄暗くなったが、連山は模糊として、紫や
紫紺の肌に夕ばえの色がはえている。それよりも美しかったのは入日に照らされた雲の色....
「遁走」より 著者:葛西善蔵
つ朝に塩瀬へでも寄って生菓子を少し仕入れて行かなくちゃ……」 壁の衣紋竹には、
紫紺がかった派手な色の新調の絽の羽織がかかっている。それが明日の晩着て出る羽織だ....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
ああ、透明だ。――赤だ、樺だ、雲だ。 あ、小さい太陽、朱だ。北だ。 波、波。
紫紺の波、波、うねり波、 光、光、光、光、金の閃光、運動、 かっきりした水平....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
夫が見る見る紫がかった透明な薄桃色に変って行く。大蓮華山から唐松岳に至る連嶺が、
紫紺の肌を水色の大気に洗わせて、目を覚むる許り鮮かになった。 水に不自由がない....