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「綿入れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

綿入れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
は、日本で着ようとは思わなかったので、西洋向きに注文した華手《はで》すぎるような綿入れに手を通しながら、とつ追いつ考えた。 「そうだ古藤《ことう》に電話でもかけ....
東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
、まだいくらも経たない時分と記憶する。 静岡辺は暖かいからというので私は薄着の綿入れで写生帳とコートは手に持っていた。そこら辺りにやしおの花が鮮《あざやか》に....
夜行巡査」より 著者:泉鏡花
きに心を許しけん、帯を解きてその幼児を膚に引き緊《し》め、着たる襤褸《らんる》の綿入れを衾《ふすま》となして、少しにても多量の暖を与えんとせる、母の心はいかなる....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
顔をして、大きい声で呶鳴ったから、役人たちもおどろきました。 その男は手織縞の綿入れを着て、脚絆、草鞋という扮装《いでたち》で、手には菅笠を持っている。年のこ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
二十八日の朝の空はぬぐうように晴れていた。三月末の俄か天気で、やがて衣更えという綿入れが重いようにも感じられたが、昔の人は行儀がいい、きょうから袷を着るわけにも....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
っかりと結んでいた。筒袖かとも思われるような袂のせまい袷の上に、手織り縞のような綿入れの袖無し半纒をきて、片褄を端折って藁草履をはいているが、その草履の音がいや....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
河町の家を出た。ほかの子分たちも高輪まで送って来た。この頃は毎日の晴天つづきで、綿入れの旅はもう暖か過ぎるくらいであった。品川の海の空はうららかに晴れ渡って、御....
生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
。この季節になると長く地の上を領していた冬が老いる。――北風も、雪も、囲炉裏も、綿入れも、雪鞋も、等しく老いる。一片の雲のたたずまいにも、自然のもくろみと予言と....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
ているようでしたけれど、いよいよ死んでから其の葛籠をあらためると、小新しい双子の綿入れが三枚と羽織が三枚、銘仙の着物と羽織の揃ったのが一組、帯が三本、印半纏が四....
続獄中記」より 著者:大杉栄
で、獄死だけはどうかして免かれたい。 収賄教誨師 獄中で一番いやなのは冬だ。綿入れ一枚と襦袢一枚。シャツもなければ足袋もない。火の気はさらにない。日さえ碌に....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
に坐っていると、襖が細目に明いたらしいので、何ごころなく振り向くと、かの黄八丈の綿入れに藤色の頭巾をかぶった娘の姿がちらりと見えた。驚きと喜びとで思わず声をかけ....
獄中消息」より 著者:大杉栄
と言うので遠く馬車を駆って裁判所まで行ったのだ。例の金網越しに路ゆく人を見ると、綿入れは袷となった。中折はパナマや麦藁となった。そしてチラホラと氷店の看板さえも....
停車場の少女」より 著者:岡本綺堂
体に眼鼻立ちの整った、どちらかといえば美しい方の容貌の持主で、紡績|飛白のような綿入れを着て紅いメレンスの帯を締めていました。――それが何だかわたくしの顔をじっ....
式部小路」より 著者:泉鏡花
かな、吾妻下駄を軽く留めて、今は散った、青柳の糸をそのまま、すらりと撫肩に、葉に綿入れた一枚小袖、帯に背負揚の紅は繻珍を彩る花ならん、しゃんと心なしのお太鼓結び....
十番雑記」より 著者:岡本綺堂
ならない。夜具の類は出来合いを買って間にあわせることにしたが、一家内の者の羽織や綿入れや襦袢や、その針仕事に女たちはまた忙がしく追い使われた。 目白に避難の当....