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「綿雲〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

綿雲の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
小さき者へ」より 著者:有島武郎
つ家はけし飛ぶ程揺れ動いて、窓|硝子《ガラス》に吹きつけられた粉雪は、さらぬだに綿雲に閉じられた陽の光を二重に遮《さえぎ》って、夜の暗さがいつまでも部屋から退《....
星座」より 著者:有島武郎
現象かもしれない。「白く塗られたる墓」という言葉が聖書にある……あれだ。 深い綿雲に閉ざされた闇の中を、霰《あられ》の群れが途切れては押し寄せ、途切れては押し....
旅日記から」より 著者:寺田寅彦
の背景には、美しい円錐火山が、優雅な曲線を空に画してそびえていた。空に切れ切れな綿雲の影が扇のように遠く広がったすそ野に青い影を動かしていた。過去のいろいろの年....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
いでいる、聞きなれない禽が、吐き出すように、クワッ、クワッと啼いている、どす黒い綿雲がちぎれて、虚空をボツボツ飛んでゆく間から、三日月が燻ぶし銀のように、冷たく....
映画雑感(Ⅰ)」より 著者:寺田寅彦
のように揺れて前方の小高い丘の丸山のほうへなびいて行く、その行く手の空には一団の綿雲が隆々と勢いよく盛り上がっている。あたかも沸き上がり燃え上がる大地の精気が空....
震災日記より」より 著者:寺田寅彦
便所口から柵を越えて逃げ出した人々らしい。空はもう半ば晴れていたが千切れ千切れの綿雲が嵐の時のように飛んでいた。そのうちにボーイの一人が帰って来たので勘定をすま....
」より 著者:寺田寅彦
黄色を帯びて物凄いと思う間に、それも消えて、暮れかかる濃鼠の空を、ちぎれちぎれの綿雲は悪夢のように果てもなく沖から襲うて来る。沖の奥は真暗で、漁火一つ見えぬ。湿....
森の絵」より 著者:寺田寅彦
て得も云われぬ色彩が梢から梢へと柔らかに移り変っている。コバルトの空には玉子色の綿雲が流れて、遠景の広野の果の丘陵に紫の影を落す。森のはずれから近景へかけて石こ....
東上記」より 著者:寺田寅彦
響きし事は忘れざるべし。湖上の景色見飽かざる間に彦根城いつしか後になり、胆吹山に綿雲這いて美濃路に入れば空は雨模様となる。大垣の商人らしき五十ばかりの男|頻りに....
札幌まで」より 著者:寺田寅彦
少なくなるのを感じる。たまたま停まる停車場に下りる人もなければ乗る人もない。低い綿雲が垂れ下がって乙供からは小雨が淋しくふり出した。野辺地の浜に近い灌木の茂った....
月かげ」より 著者:豊島与志雄
ばかりぱちぱちやっていた。私は皆の方に背を向けて、窓から暫く外を眺めた。空に薄い綿雲がたなびいて、それにぼーっと明るい色がさしていた。 「おや、もう夜が明けるん....
貞操問答」より 著者:菊池寛
サカを持ったレグホン種の真白い雄鶏が、納屋から飛び出して、ときを作った。 白い綿雲が邪魔扱いにされて、低い空をグングン流れて行く、一番いたぶられた月見草や芝草....
博物誌」より 著者:岸田国士
ら雲へ、白い橇のように滑る。なぜなら、彼は、水の中に生じ、動き、そして消え失せる綿雲だけに食欲を感じるからである。彼が望んでいるのは、その一きれである。そして、....
触覚の世界」より 著者:高村光太郎
という。白いには違いないが、同時に、其は公孫樹の木材を斜に削った光沢があり、春の綿雲の、木曾の檜の板目とはまるで違う。考えてみると、色彩が触覚なのは当りまえであ....
少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
湖水の氷が一時にとけはじめた。島に二年目の春がおとずれたのだ。天は浅黄色に晴れて綿雲が夢のように浮かぶ。忍苦の冬にたえてきた木々がいっせいに緑の芽をふきだす。土....