緋桃[語句情報] » 緋桃

「緋桃〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

緋桃の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
安井夫人」より 著者:森鴎外
た。 そこの障子をあけて、長倉のご新造が顔を出した。手にはみやげに切らせて来た緋桃《ひもも》の枝を持っている。「まあ、お忙しい最中でございますね」 お豊さん....
雛がたり」より 著者:泉鏡花
……ついて落いて、裁形、袖形、御手に、蝶や……花。…… かかる折から、柳、桜、緋桃の小路を、麗かな日に徐と通る、と霞を彩る日光の裡に、何処ともなく雛の影、人形....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
か躊躇した。そのうち二月も過ぎて、娘のお春の節句が来た。小幡の家でも雛を飾った。緋桃白桃の影をおぼろにゆるがせる雛段の夜の灯を、お道は悲しく見つめた。来年も再来....
春昼」より 著者:泉鏡花
げましょうに。 まあ、何よりもお楽に、」 と袈裟をはずして釘にかけた、障子に緋桃の影法師。今物語の朱にも似て、破目を暖く燃ゆる状、法衣をなぶる風情である。 ....
絵本の春」より 著者:泉鏡花
ろと、且つ乱れてそこへ響く。……幽に人声――女らしいのも、ほほほ、と聞こえると、緋桃がぱッと色に乱れて、夕暮の桜もはらはらと散りかかる。…… 直接に、そぞろに....
売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
ような雨の灰汁に包まれては、景色も人も、神田川の小舟さえ、皆黒い中に、紅梅とも、緋桃とも言うまい、横しぶきに、血の滴るごとき紅木瓜の、濡れつつぱっと咲いた風情は....
大和路・信濃路」より 著者:堀辰雄
に危く其処を通りこしそうになった。その途端、その門の奥のほうの、一本の花ざかりの緋桃《ひもも》の木のうえに、突然なんだかはっとするようなもの、――ふいとそのあた....
随筆 寄席風俗」より 著者:正岡容
な死んでしまって、今日も来てくれている柳亭左楽がわずかに達者でいるばかりである。緋桃《ひとう》が、連翹《れんぎょう》が、※子《しどみ》が、金盞花《きんせんか》が....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
見えつつ、幻影かと思えば、雲のたたずまい、日の加減で、その色の濃い事は、一斉に緋桃が咲いたほどであるから、あるいは桃だろうとも言うのである。 紫の雲の、本願....
式部小路」より 著者:泉鏡花
背高く見ゆる衣紋つき、備わった品の可さ。留南奇の薫馥郁として、振を溢るる縮緬も、緋桃の燃ゆる春ならず、夕焼ながら芙蓉の花片、水に冷く映るかと、寂しらしく、独り悄....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
、一体白身の女神、別嬪の姉さんが、舞台の礫の時より、研いだようになお冴えて、唇に緋桃を含んで立っていた。 つもっても知れる……世界を流れ渡る、この遍路芸人も、....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
た。 誰もいなかった。 そこらに乾いている馬糞から陽炎が燃えている。そして、緋桃の花が太陽からこぼれて来た。 「でも、城太郎さんの先生は、もうすぐここを立つ....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
。 午過ぎの小半日を、さて退屈に思う。日は長いし、飴のように体は伸びを欲する。緋桃の下に寝ている牝牛にならって、武蔵も、茶店の隅の床几に横になっていた。 今....
美人鷹匠」より 著者:大倉燁子
紙は、彼女の心を真暗にしてしまった。 花という小間使のいたことは記憶している、緋桃の花のような可憐な美少女だった、その少女がいるために御用聴きの若者達が台所口....