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「緑陰〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

緑陰の前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
した。それから鼻唄をうたい出した。鼻唄と云っても漢詩である。 春去夏来新樹辺、緑陰深処此留連、尋常性癖耽 その時一人の旅人が――武者修行風の若い武士が、麓の....
断橋奇聞」より 著者:田中貢太郎
世高の眼はすぐ声のしたと思われる方へ往った。池の左、そこにある台※の東隣となった緑陰の中に小さな楼が見えて、白い小さな女の顔があった。それは綺麗な眼のさめるよう....
田舎教師」より 著者:田山花袋
麦畑いっぽう垣根になって、夏は紅と白の木槿が咲いたり、胡瓜や南瓜が生ったりした。緑陰の重なった夕闇に螢の飛ぶのを、雪子やしげ子と追い回したこともあれば、寒い冬の....
鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
暑さかな 涼しさや月に経よむ一の尼 更へ/\て我が世は古りし衣かな 新茶煮てこの緑陰の石を掃ふ 矢車に朝風強き幟かな 灌仏やはや黒々と痩せ給ふ 大団扇祭の稚児を....
」より 著者:国木田独歩
ちより走り出でてこれを貫き過ぐ。木々は野生えのままに育ち、春は梅桜乱れ咲き、夏は緑陰深く繁りて小川の水も暗く、秋は紅葉の錦みごとなり。秋やや老いて凩鳴りそむれば....
日本男子論」より 著者:福沢諭吉
が》き、我が妻女がまさしく我に傚《なら》い、我が花柳に耽《ふけ》ると同時に彼らは緑陰に戯れ、昨夜自分は深更《しんこう》家に帰りて面目《めんぼく》なかりしが、今夜....
向嶋」より 著者:永井荷風
羸驂始可跨 羸驂《るいさん》始《はじ》めて跨《またが》る可《べ》し 高樹緑陰敷 高《たか》き樹《き》は緑《みどり》の陰《かげ》を敷《し》き 草嫩....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
当たる。磯辺を歩する数丁、石と貝とを拾いて帰る。 濠南城外歩声、想見家山春已尽、緑陰堆裏杜鵑鳴。 (豪州南部の郊外、秋晴れの下を歩けば、黄ばんだ木の葉が風もない....
長崎の鐘」より 著者:永井隆
がついてみると、どれも痛い。血まみれの衣を洗い、それを岩の上にひろげて、乾くまで緑陰に眠る。初めて熟睡の快を味わった。眼がさめてみると看護婦たちも軽い鼾《いびき....
三国志」より 著者:吉川英治
馬蠅の世界も、彼らの世界も、なんの変りもなかった。――むしろ馬蠅の世界には、緑陰の涼風があり、豆の花が咲いていた。 「死にたい。しかし死ねない。なぜ、朕は天....