縫う[語句情報] » 縫う

「縫う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

縫うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
尾生の信」より 著者:芥川竜之介
《ところどころ》に川楊《かわやなぎ》が、こんもりと円く茂っている。だからその間を縫う水の面《おもて》も、川幅の割には広く見えない。ただ、帯《おび》ほどの澄んだ水....
或る女」より 著者:有島武郎
かになんとなく忙《せわ》しくなって来た。事務員や水夫たちが、物せわしそうに人中を縫うてあちこちする間に、手を取り合わんばかりに近よって別れを惜しむ人々の群れがこ....
卑怯者」より 著者:有島武郎
さら憎々しく思えた。彼はこうしたやんちゃ者の渦巻《うずまき》の間を、言葉どおりに縫うように歩きながら、しきりに急いだ。 眼ざして来た家から一町ほどの手前まで来....
宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
とになっている。太陽や遊星が十二宮の獣帯に各一〇日ずつに配された三六の星宿の間を縫うて運行する経路が図表中に記入され、そういうものが最も古い時代から太陽神ラー(....
春の潮」より 著者:伊藤左千夫
「寒いことねい」 「待ったでしょう」 おとよはそっと枝折戸に鍵をさし、物の陰を縫うてその恋人を用意の位置に誘うた。 おとよは省作に別れてちょうど三月になる。....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
|崑崙奴の形相。手に手に、すくすくと槍を立つ。穂先白く晃々として、氷柱倒に黒髪を縫う。あるものは燈籠を槍に結ぶ、灯の高きはこれなり。あるものは手にし、あるものは....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
に、広場の端へ駈込むと……石高路をがたがたしながら、板塀の小路、土塀の辻、径路を縫うと見えて、寂しい処幾曲り。やがて二階屋が建続き、町幅が糸のよう、月の光を廂で....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
える時、風が擲つがごとく、虚空から、――雨交りに、電光の青き中を、朱鷺色が八重に縫う乙女椿の花一輪。はたと幕に当って崩れもせず……お稲の玉なす胸に留まって、たち....
南地心中」より 著者:泉鏡花
れを、あたりの湯屋の煙、また、遠い煙筒の煙が、風の死したる大阪の空を、あらん限り縫うとも言った。 宵には風があった。それは冷たかったけれども、小春凪の日の余残....
琵琶伝」より 著者:泉鏡花
かば、この時のごとく声を揚げて二たび三たび呼ぶとともに、帳内深き処|粛として物を縫う女、物差を棄て、針を措きて、ただちに謙三郎に来りつつ、笑顔を合すが例なりしな....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
づき、お伽話の絵に描いた外科医者という体で、震く唇に幽に見える、夫人の白歯の上を縫うよ。 浦子の姿は烈しく揺れたが、声は始めから得立てなかった。目は※いていた....
星女郎」より 著者:泉鏡花
挿込んだように、靄の蔓ったのが、頭を出して、四辺は一面に濛々として、霧の海を鴉が縫うように、処々、松杉の梢がぬっと顕れた。他は、幅も底も測知られぬ、山の中を、時....
夫人利生記」より 著者:泉鏡花
たまま葎の中を出たのであった。 赤門寺に限らない。あるいは丘に、坂、谷に、径を縫う右左、町家が二三軒ずつ門前にあるばかりで、ほとんど寺つづきだと言っても可い。....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
る。湾は曲折して岸に入りこみ、道もまた屈曲窮まりない。縦横に走る電車はその街々を縫うように走っている。) 山海抱、人亦白黄銅鉄交。 (山と海が市街をかこみ、凹凸....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
が此の無人の境に建設されてゆく。 峰頂を踏んで、躑躅や山吹、茨などの灌木の間を縫うて行くことは、疲労を忘れしめるほどの愉快を感ずるものである。幾春秋の雨露風雪....