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「翳す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

翳すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
」 主税は堪りかねて、ばりばりと烏府の中を突崩した。この暖いのに、河野が両手を翳すほど、火鉢の火は消えかかったので、彼は炭を継ごうとして横向になっていたから、....
天守物語」より 著者:泉鏡花
ずべき階子の口あり。その口より、まず一の雪洞顕れ、一廻りあたりを照す。やがて衝と翳すとともに、美丈夫、秀でたる眉に勇壮の気満つ。黒羽二重の紋着、萌黄の袴、臘鞘の....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
のお馴れなさいません、貴女には道しるべ、また土産にもと存じまして、これが、(手に翳す)その燈籠でございます。 美女 まあ、灯も消えずに…… 女房 燃えた火の消え....
紅玉」より 著者:泉鏡花
舞台|明くなる。 初の烏 (思い着きたる体にて、一ツの瓶の酒を玉盞に酌ぎ、燭に翳す。)おお、綺麗だ。燭が映って、透徹って、いつかの、あの時、夕日の色に輝いて、....
伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
頂いて幾万年の白山じゃ。貴女、時を計って、その鸚鵡の釵を抜いて、山の其方に向って翳すを合図に、雲は竜のごとく湧いて出よう。――なおその上に、可いか、名を挙げられ....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
、月には蒼き俤立とう――ちらほらと松も見えて、いろいろの浪を縅した、鎧の袖を※に翳す。 「あれを貴下、お通りがかりに、御覧じはなさりませんか。」 と背向きにな....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
、ああ、生きているか……千鳥も鳴く、私も泣く。……お恥かしゅうござんす。」 と翳す扇の利剣に添えて、水のような袖をあて、顔を隠したその風情。人は声なくして、た....
白金之絵図」より 著者:泉鏡花
を照す、老人が、暗い心の補助に、烏瓜の灯は天の与えと心得る。難有い。」と掌を額に翳す。 婆さんは希有な顔して、 「でも、狐火か何ぞのようで、薄気味が悪いようで....
南地心中」より 著者:泉鏡花
髻ふつ、と真中から二岐に颯となる。半ばを多一に振掛けた、半ばを握って捌いたのを、翳すばかりに、浪屋の二階を指麾いた。 「おいでや、美津さんえ、……美津さんえ。」....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
が居並んだ処だと、この言は殿様に通ずるんだ、それ、麻裃か、黒羽二重お袴で、すっと翳す、姿は好いね。処をだよ。……呼べば軒下まで俥の自由につく処を、「お俥。」とな....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
廊下の八分目ぐらいな処で、 「便所か。」 と云う、髯、口許が明々として、洋燈を翳す。 この明で、小松原は水浸しになったほど、汗びっしょりの、我ながら萎垂れた....
怨霊借用」より 著者:泉鏡花
いるようで、現在、朝湯の前でも乳のほてり、胸のときめきを幹でおさえて、手を遠見に翳すと、出端のあし許の危さに、片手をその松の枝にすがった、浮腰を、朝風が美しく吹....
多神教」より 著者:泉鏡花
(発き出したる形代の藁人形に、すくすくと釘の刺りたるを片手に高く、片手に鉄槌を翳すと斉しく、威丈高に突立上り、お沢の弱腰を※と蹴る)汚らわしいぞ! 罰当り。 ....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
ったのは亭々として雲を凌ぎ、町へ寄ったは拮蟠して、枝を低く、彼処に湧出づる清水に翳す。…… そこに、青き苔の滑かなる、石囲の掘抜を噴出づる水は、音に聞えて、氷....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
、……私も話すうちに、何ですか、つい悲しくなって来た。」 と、眩ゆそうに入日に翳す、手を洩るる、紅の露はあらなくに、睫毛は伏って、霧にしめやかな松の葉より濃か....