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「老鶯〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

老鶯の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
るのを待たされた。少し細目に開けた障子の隙間から畑を越して平凡な裏山が覗かれる。老鶯《ろうおう》が鳴く。丸子の宿の名物とろろ汁の店といってももうそれを食べる人は....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
っと考え込んだ。 花を踏み踏み幾十羽の小鳥が庭の木立で啼いている。声を涸らした老鶯が白い杏の花の間で間延びに経を読んでいる。山国の春の最中らしい。 「甚兵衛」....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
の心にかかって来た。彼が一歩踏み出したところは、往来するものの多い東海道だ。彼は老鶯の世を忍ぶ風情で、とぼとぼとした荷馬の※沓の音を聞きながら、遠く板橋回りで木....
陳宝祠」より 著者:田中貢太郎
いた。情熱のなくなったような冷たいその光が微赤く此方の峰の一角を染めて、どこかで老鶯の声が聞えていた。杜陽は日が暮れないうちに、宿駅のある処へ往こうと思って気が....
田舎教師」より 著者:田山花袋
清三の姿は久しくその前に立っていた。もう五月の新緑があたりをあざやかにして、老鶯の声が竹藪の中に聞こえた。 午後からは、印刷所に行ったり石川を訪問したりし....
猿ヶ京片耳伝説」より 著者:国枝史郎
が木の枝や藪の蔭などから、この人たちを眺めていた。丘をへだてた竹叢のほとりから、老鶯の啼き音が聞こえて来た。 「痛い! ま、どうしてこう痛むのだろう!」 女は....
稚子法師」より 著者:国枝史郎
曽川や藤咲く下を行く筏 卯の花を雪と見て来よ木曽の旅 季節は晩春初夏であった。老鶯も啼いていた。筏を見ては流転が思われ、旅と感じて行路難が犇々と胸に浸みるので....
南蛮秘話森右近丸」より 著者:国枝史郎
「ム――」と云ったが右近丸は思わず腕を組んでしまった。 朝風に桜が散っている。老鶯が茂みで啼いている。 それを背景にして玄関には、父を失い手頼りのない、美し....
鸚鵡蔵代首伝説」より 著者:国枝史郎
実ばかりとなった藤棚を右手にし、青い庭石に腰をかけ、絶えず四辺から聞こえてくる、老鶯や杜鵑の声に耳を藉し、幸福を感じながら彼は呆然していた。納屋の方からは、大勢....
娘煙術師」より 著者:国枝史郎
、死骸ばかりが残っていた。 日がテラテラと照っている。木々の新葉が光っている。老鶯の声が聞こえている。が、一人の人通りもない。血溜りの中で幾匹かの蟻が、もがき....
呼ばれし乙女」より 著者:岡本かの子
黄色の山肌が青空からくっきり刻み出されている。谷底に横わる尾根の、翠滴る大竹籔に老鶯が鳴いている。 「あすこに白く細くちらりと見えるだろ。あれが躄勝五郎の物語で....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
鶯ノ有ルノミ 武蔵は、凝然と、その詩句をにらんでいた。――満地の樹々に啼きぬく老鶯の音の中に。 門にかけてある以上、聯の詩句は、いうまでもなく山荘の主人の心....