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耳を澄ます
「耳を澄ます〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
耳を澄ますの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
るかどうだか、――」
父はこう云いかけると、急にまた枕から頭を擡《もた》げて、
耳を澄ますようなけはいをさせた。
「お父さん。お母さんがちょいと、――」
今度....
「或る女」より 著者:有島武郎
の寺のともしれない鐘の声がそれに応ずるように聞こえて来た。その音に引き入れられて
耳を澄ますと夜の沈黙《しじま》の中にも声はあった。十二時を打つぼんぼん時計、「か....
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
は反り返って手をうった。 「静かにおしよ。舞台へきこえらあね」 二人はだまって
耳を澄ますと、舞台では見物の興をそそり立てるような、三味線の撥音《ばちおと》が調....
「鮨」より 著者:岡本かの子
、その間へまた煎餅の次の端を挟み入れる――いざ、噛み破るときに子供は眼を薄く瞑り
耳を澄ます。 ぺちん 同じ、ぺちんという音にも、いろいろの性質があった。子供....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
あたりで「おうい、おうい」と微かに呼ぶ声がきこえたので、三人は俄かに立ちどまって
耳を澄ますと、呼ぶ声はつづけて聞えた。もう猶予すべきでないので、左内はその声をた....
「親子」より 著者:有島武郎
とがあるばかりだった。そしてあたりは静まり切っていた。基石の底のようだった。ただ
耳を澄ますと、はるか遠くで馬鈴薯をこなしているらしい水車の音が単調に聞こえてくる....
「動かぬ鯨群」より 著者:大阪圭吉
氏は、丸辰と署長を連れて、前甲板のタラップを下り、薄暗い船員室の扉の前に立った。
耳を澄ますと、果して人の息使いが聞える。東屋氏は、すかさず扉をサッと開けた。――....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
(失物はココにある、というお知らせだろう、) (どうか、)と言う、ひそひそ相談。
耳を澄ますと、蚊帳越の障子のようでもあり、廊下の雨戸のようでもあり、次の間と隔て....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
、 「何だっけね、」 と可愛い声。 「お稲、」と雪女が小さく言った。 松崎は
耳を澄ます。 と同時であった。 「……お稲、お稲さんですって、……」と目のふち....
「湯女の魂」より 著者:泉鏡花
お頼み申す! お頼み申す※」 と続けざまに声を懸けたが、内は森として応がない、
耳を澄ますと物音もしないで、かえって遠くの方で、化けた蛙が固まって鳴くように、南....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
のであろうけれども、心あって聞く者が、その境に臨むと、山から谷、穴の中の蟻までが
耳を澄ます、微妙な天楽であるごとく、喨々として調べ奏でる。 ……きょ、きょら、....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
、次第々々に雲の底へ、高く消えて行く類の、深秘な音楽ではあるまいか、と覚束なさに
耳を澄ますと、確に、しかも、段々に峰から此方に近くなる。 蜩がそれに競わんとす....
「一週一夜物語」より 著者:小栗虫太郎
、パドミーニってば……」 そういって、ミス・ヘミングウェーはしばらくのあいだ、
耳を澄ますようにじっと湯の音をさせませんでした。 「じゃ誰よ、そこにいんのは? ....
「月世界競争探検」より 著者:押川春浪
声を潜めて、 「あの声は何でしょう。」 「さあ。」 と、始めは空耳ではないかと、
耳を澄ますと、その唸り声は尚聞える。静かな、湿っぽい、洞穴に、弱々しい、切なげな....
「雪女」より 著者:岡本綺堂
一|刹那である。入口の戸にさらさらと物の触れるような音がきこえた。 暗いなかで
耳を澄ますと、それは細かい雪の触れる音らしいので、堀部君は自分の神経過敏を笑った....