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耳門
「耳門〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
耳門の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「宝蔵の短刀」より 著者:田中貢太郎
いるのがぼんやり見えた。たしかに夫の隠し女である。女房の眼は嫉妬に輝いた。彼女は
耳門戸《くぐり》をつと開けた。女は跫音に驚いたように雨戸を離れた。赤い※《きれい....
「蟇の血」より 著者:田中貢太郎
」 女の顔は笑っていた。 「そうですか、好いですとも、往きましょう」 左側に
耳門があった。女はその方へ歩いて往って門の扉に手をやると扉は音もなしに開いた。女....
「黴」より 著者:徳田秋声
う大分ふけて、風がしっとりしていた。 病室と入口の違った診察室は、大きな黒門の
耳門を潜ってから、砂利を敷き詰めた門内をずっと奥まったところにあった。中へ入った....
「雪之丞変化」より 著者:三上於菟吉
黒門町のお初は、しなりしなりと三斎屋敷の門前に近づいたが、扉こそとざされておれ、
耳門《くぐり》はまだ閉っていないらしく、寝しずまるには、間があるようだ。
――....
「円朝の牡丹灯籠」より 著者:田中貢太郎
」 と云って起した。新三郎はそこで起きて陸へ眼をやると、二重の建仁寺垣があって
耳門が見えていた。それは確に飯島の別荘のようであるから、 「伴蔵、ちょっと此処へ....
「今戸心中」より 著者:広津柳浪
めている。平田もじッと吉里を見ていたが、堪えられなくなッて横を向いた時、仲どんが
耳門《くぐり》を開ける音がけたたましく聞えた。平田は足早に家外《おもて》へ出た。....
「郊外」より 著者:国木田独歩
て粛然としている。 『幸ちゃんに今帰ったからッて、そ言っておくれ、』と時田は庭の
耳門へ入った、お梅はばたばたと母屋の方へ駆け出して土間へそっと入ると、幸吉が土間....
「カラマゾフの兄弟」より 著者:ドストエフスキーフィヨードル・ミハイロヴィチ
えているのには眼もくれず、黙ったまま庭へ出て行った。ここで彼は明らかに、その声は
耳門《くぐり》からほど近く、庭の中に立っている湯殿の中から漏れてくるのであって、....
「女房ども」より 著者:神西清
ごしに話しができるのですが、仕舞いにはぐるりと大廻りをしないで済むように、垣根に
耳門をこしらえました。とかくこの世の禍や躓きは、女から来ることが多いものです。そ....
「濹東綺譚」より 著者:永井荷風
が出来ないくらいな狭い道で、五六歩行くごとに曲っているが、両側とも割合に小綺麗な
耳門《くぐりもん》のある借家が並んでいて、勤先からの帰りとも見える洋服の男や女が....
「萌黄色の茎」より 著者:田中貢太郎
めでとう、針工場さん」 お幸ちゃんに手をかけていた学生が笑った。 お菊さんは
耳門を入ると右の手に持っていた岡持を左の手に持ちかえて玄関の方を注意した。青ざめ....
「春心」より 著者:田中貢太郎
七は蛇の方を見い見い斜に往って表庭と入口の境になった板塀の方へ往って、そこにある
耳門の桟を啓けて出て往った。広栄は顔を右斜にして背後の方を見るようにした。 「お....
「水魔」より 著者:田中貢太郎
入りやがったな、と舌打しながらその方へ歩いて往った。船板塀をした二階家があって、
耳門にした本門の簷口に小さな軒燈が点り、その脇の方に「山口はな」と云う女名前の表....
「黄灯」より 著者:田中貢太郎
燈が光っていた。その電燈の上に裸樹の桜の枝が微に動いていた。 書生は左側にある
耳門から入った。主翁もそれに跟いて往った。門の中には門番のいる磨り硝子の小さな建....