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耳馴れ
「耳馴れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
耳馴れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「百物語」より 著者:森鴎外
藪蚊《やぶか》ですから、明りを附ける頃にはいなくなってしまいます」と云うその声が
耳馴れているので、顔を見れば、蔀《しとみ》君であった。蔀君も同時に僕の顔を見附け....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
来ない――夫人はどうしたろう。 がたがた音がした台所も、遠くなるまで寂寞して、
耳馴れたれば今更めけど、戸外は数万の蛙の声。蛙、蛙、蛙、蛙、蛙と書いた文字に、一....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
通常の白蝋と変りはなかった。そして、端から火を移してゆくと、ジイジイっと、まるで
耳馴れた囁きを聴くような音色を立てて点りはじめ、赭ばんだ――ちょうど血を薄めたよ....
「小村淡彩」より 著者:宮本百合子
た。何処でも起きるには早すぎるのに、誰だろう。気になるのは、その余り穏やかでない
耳馴れない男の声がどうも店の囲りですることだ。いしは、寝間着の裾を踏みつけながら....
「杉垣」より 著者:宮本百合子
めていて、そこが今度南洋へ手をのばすについて、関係方面への折衝に来たのであった。
耳馴れない南洋の島々の名をいくつかあげて、複雑な背後のいきさつをほのめかしながら....
「禰宜様宮田」より 著者:宮本百合子
た窓下の噴水が、急にパタリと止まってしまったときに感じる通りの心持――何でもなく
耳馴れていたお喋り、高い笑声が聞えない今となると、たまらなく尊い愛くるしい響をも....
「青年」より 著者:森鴎外
その時何か話して笑いながら、店の前を通り掛かる男女の浴客があった。その女の笑声が
耳馴れたように聞えたので、店の上さんが吊銭の勘定をしている間、おもちゃの独楽を手....
「今日の文学に求められているヒューマニズム」より 著者:宮本百合子
、大衆の生活感情を作品に反映してゆき得るかと云う点になると、答はまことに平凡な、
耳馴れた、既に十分知られている数語で表現されるであろう。それは、作家自身の生活の....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
われるのである。これは人智の未発達から発生する、必然的帰結であるから致方がない。
耳馴れたものほど俗受けがする。之に反して
耳馴れぬもの、眼馴れぬものは頭から疑われ....
「武州喜多院」より 著者:中里介山
ではありません、この隣りの東照宮の所蔵品です」とのこと、喜多院の岩佐勝以とばかり
耳馴れていたのに、それと聞いてやや意外の思いをしたが、本来東照宮はこの喜多院の中....
「追憶の冬夜」より 著者:寺田寅彦
当積もった。明りを消して寝ようとしていると窓外に馬の蹄の音とシャン/\/\という
耳馴れぬ鈴の音がする。カーテンを上げて覗いてみると、人気のない深夜の裏通りを一台....
「ラジオ雑感」より 著者:寺田寅彦
味するのであろう。少なくも盲目でない普通の人にとってはそうである。それでラジオで
耳馴れた人の声を聞くと、その声が直ちにその人の顔の視像を呼出して来て合体する。そ....
「巷の声」より 著者:永井荷風
は広いので、わたくしが牛込辺で物めずらしく思った時には、他の町に在っては既に早く
耳馴れたものになっていたかも図られない。 凡門巷を過行く行賈の声の定めがたきは....
「食道楽」より 著者:村井弦斎
ず「旦那様、お昼の副食物《おかず》は何に致しましょう」大原は旦那様と呼ばるるさえ
耳馴れぬ心地にて新なる尊称のように嬉しく感じ「オー婆や、お昼を何にしていいか僕に....
「望郷」より 著者:服部之総
なぞという木を見たこともない開拓民たちは、サッポロ・チャシナイ・クッチャンなどと
耳馴れぬアイヌ地名を覚えるのと同じ気安さで、アメリカの教師が教えたエルムという樹....