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聴耳
「聴耳〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
聴耳の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「酒中日記」より 著者:国木田独歩
枕元を歩いて、長火鉢《ながひばち》の上なる豆洋燈を取上げた。 暫時《しばらく》
聴耳《ききみみ》を聳《たて》て何を聞くともなく突立っていたのは、猶《な》お八畳の....
「冬の蠅」より 著者:梶井基次郎
男を相手に媚《こび》を売っている女らしく思える。私はその返事のバスに人ごとながら
聴耳をたてたが、相不変《あいかわらず》曖昧《あいまい》な言葉が同じように鈍い調子....
「橡の花」より 著者:梶井基次郎
す。手の調子がきまって来たためです。当然きこえる筈だったのです。なにかきこえると
聴耳をたてはじめてから、それが一つの可愛いリズムだと思い当てたまでの私の気持は、....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
だった。 母親は今夜誰か男の客があることを、敏感に知っていた。思わず二階の方へ
聴耳が立って行くのだった。無理もなかった。こんな夜更けに男の客なぞここ二年ほど絶....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
たものか、背後の検事が突然立ち止った。彼は、なにかしら慄然としたように息を詰め、
聴耳を立てはじめたのであるが、やがて法水に、幽かな顫えを帯びた声で囁いた。
「法....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
あるまい。大挙して攻めて来るに相違ない。片端から突き殺してやろう」 彼はじっと
聴耳を立て廊下の様子を窺った。 その時足音が聞こえて来た。しかし大勢の足音では....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
と思われた。 そうしているうちにも、葉子は時々聞こえる自動車のサイレンや爆音に
聴耳を立てていた。彼女の神経に、それが黒須の追迹のように思えてならなかった。世間....
「黒猫」より 著者:島木健作
した。妻は驚いて飛び起きて駆け下りて行った。いつもよりははげしい物音に私も思わず
聴耳を立てた。音ははじめ台所でし、それからとなりの風呂場に移った。物の落ちる音、....
「艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
らない、怪しい騒めきが始まったのを聴きつけて、覚えず半身を舷から乗出すようにして
聴耳を立てた。騒めきは掠めるような人声で、すぐ頭の上の社廟のなかに起きていた。何....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
、どうなりそれをやり了せると、彼はなるだけ体を動かさない工夫をして、遠くの物音に
聴耳を立てた。おりおり男衆の騒いでいるらしい声がきこえて来た。しかし何を言ってい....
「阿Q正伝」より 著者:井上紅梅
だから、すぐに暗の中を探って行くと、前の方にいささか足音がするようであった。彼は
聴耳立てていると、いきなり一人の男が向うから逃げて来た。彼はそれを見るとすぐに跡....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
に、片身の本体が明らかにされたと云うのは、そうして対座中、どうしたことか、法水が
聴耳を立てはじめたからである。 それはどこかから、チャリンチャリンと楽玻璃のよ....
「正雪の遺書」より 著者:国枝史郎
もいません。一同の介錯を引受けた僧覚善に至っては、阿修羅のような顔をして、じっと
聴耳を澄ましています。そして時々思い出したように、口の中でこんなことを唱えていま....
「接吻」より 著者:神西清
ということだった。 晩になって、同僚たちが色恋や女の話をやりだすと、彼はじっと
聴耳を立てて、近くへ身を乗り出してゆくのだったが、その面上には、自分たちの参加し....
「グーセフ」より 著者:神西清
た駈けて行った。……悪いことでも持ち上ったのじゃないか。グーセフは頭をもたげて、
聴耳を立てる。すると、例の三人組がまた骨牌をしているのが見える。パーヴェル・イヴ....