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胸の火
「胸の火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
胸の火の前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
之助が足近く通って来るというだけのことに過ぎなかったが、それだけのことでもお絹の
胸の火をあおるには十分であった。 「お此さん、ありがとうよ」と、お絹はわざと落ち....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
とはさすがに気がつかないで、いたずらに蔭口を云うくらいですごしていたが、若い娘の
胸の火はこの頃の暑さ以上に燃えて熱して、かれの魂は憤怒に焼けただれていた。かれは....
「斜陽」より 著者:太宰治
人と言ってもいいあの洋画家が、おそろしくてならないのでした。あきらめようと思い、
胸の火をほかへ向けようとして、手当り次第、さすがのあの洋画家も或る夜しかめつらを....
「十姉妹」より 著者:山本勝治
。いや、諸々の原因は数えあげることは出来たが、その諸々の原因そのものが本来なれば
胸の火をより燃え熾からしむべき薪である筈だった。この新らしい薪であるべき事柄が、....
「探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
いう風で、ますます吉之助の方へ接近して行ったらしい。それを見せつけられて、お蝶の
胸の火は燃えあがった。しかも友之助にわが身を許してしまったという弱味がある以上、....
「風と光と二十の私と」より 著者:坂口安吾
も白痴的な女に妙に惹かれるのだが、これがその現実に於ける首まりで、私は恋情とか、
胸の火だとか、そういうものは自覚せず、極めて冷静に、一人の少女とやがて結婚しても....
「有喜世新聞の話」より 著者:岡本綺堂
いう風で、ますます吉之助の方へ接近して行ったらしい。それを見せつけられて、お蝶の
胸の火は燃えあがった。しかも友之助にわが身を許してしまったという弱味がある以上、....
「多神教」より 著者:泉鏡花
ものが見た目では、大い鮟鱇ほどな燐火が、ふわりふわりと鉄橋の上を渡ったいうだね、
胸の火が、はい、腹へ入って燃えたんべいな。 仕丁 お言の中でありますがな、橋が危....
「三国志」より 著者:吉川英治
に、天下があなたを視る眼は一変します」 「分った。もういうな」 曹操は、自分の
胸の火を、自分で消しまわるに苦しんでいるようだった。 人いちばい明晰な理念と、....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
おけない不安にかられだしていた。 昼の御座であった。彼女は人なき折をみてついに
胸の火ぶたを切った。その顔いろには後醍醐もハッとされたふうである。まったく、いつ....
「大岡越前」より 著者:吉川英治
父なる人間が、遠い地方で、田舎奉行をしているとか聞いていたうちは、まだ、かの女の
胸の火は灰のうちにあった。――それが、去年、江戸南町奉行の任について、大岡越前守....