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胸先
「胸先〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
胸先の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
がら船が大きくかしぐのにうまく中心を取りながら歩こうとすると、また不快な気持ちが
胸先にこみ上げて来るのを葉子は強く押し静めて事もなげに振る舞おうとした。
博士....
「真景累ヶ淵」より 著者:三遊亭円朝
《だしぬけ》に三藏の脇腹へ突込《つきこ》みました、アッといって倒れる処へ乗掛り、
胸先を抉《えぐ》りましたが、一刀《いっぽん》や二刀《にほん》では容易に死ねません....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
しかに懐剣だ。どうやら、こいつは思いのほかの大物かも知れねえぜ」 ぴんと名人の
胸先にひらめいたのは、――血! 血! 血! あの軸物に降るいぶかしい生血のことで....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
皆さまがお騒ぎでござりましたゆえ、なんじゃと申して尋ねましたら、座元の女親方が、
胸先を匕首《あいくち》でえぐられまして、お殺されなさったとこういうのでござります....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
そのお旗本のだんなが、眠っている夜中に、どうしたことか急に胸が重くなって、なんか
胸先のあたりを押えつけられるような気がしましたものだからね、はっと思って、ふと目....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
のことばがやさしくなって、おとよのつらさはいよいよせまる。おとよも言いたいことが
胸先につかえている。自分と省作との関係を一口に淫奔といわれるは実に口惜しい。さり....
「三浦老人昔話」より 著者:岡本綺堂
た。だんだんに強くなってくる雨に濡れながら、しずかに歩いているうちに、後悔の念が
胸先を衝きあげるように湧いて来ました。 「おれは馬鹿なことをした。」 当座の口....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
一は美津の背に額を附けて、五人囃子の雛二個、袖を合せたようであった。 揃って、
胸先がキヤキヤと痛むと云う。 「酒|啖え、意気地なし!」 で、有無を言わせず、....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
ていたの?」と開き直って訊いた。すぐ(美沢にも見られたかしら!)と、ワクワクと、
胸先に苦しさが来たからである。 「クライヴ・ブルックみたいじゃないの。あの人誰さ....
「三重宙返りの記」より 著者:海野十三
っているところの見えざる敵“慣性”だなと悟った。 機が地上に下りると、僕は急に
胸先がわるくなって、むかむかしてきた。生唾が、だらだらと出てきた。全身には、びっ....
「明暗」より 著者:岡本かの子
として後に坐っている夫の三木雄を振り返った。初夏の朝の張りのある陽の光が庭端から
胸先上りの丘の斜面に照りつけている。斜面の肌の青草の間に整列している赤松の幹に陽....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
おいいなさいましたものを、私がうっかりもり過ぎて」と妹分の優しい取なし。それさえ
胸先に沁みましたのに、「あちらでおやすみなさいまし。」……次ぎの室へ座を立たせて....
「女の膝」より 著者:小山内薫
ったので、不図また眼を開けて見ると、再度吃驚したというのは、仰向きに寝ていた私の
胸先に、着物も帯も昨夜見たと変らない女が、ムッと馬乗に跨がっているのだ、私はその....
「粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
う積りで、火縄を附ければ直に射てることに成って居る、それが如何致した」 と束の
胸先へ狙を附けましたから驚いて、 束「暫くお待ち下さいまし、手前喰酔ってまいりま....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
、谷の空気を劈いて山から山に遠鳴りした。何だろう、雪崩れだろうかと話し合っている
胸先に、不図厭な考えが浮んで来た、山体を破壊し併せて人間の性情を破壊する詛わしい....