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胸底
「胸底〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
胸底の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
合わない、滑《なめらか》な調子で、こう云った。幾分か乱されはしたものの、まだ彼の
胸底には、さっきの満足の情が、暖く流れていたからであろう。
「いや、そう云う訳で....
「人間失格」より 著者:太宰治
した。 自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上りました。しかし、これこそ
胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせて....
「耽溺」より 著者:岩野泡鳴
たまに聴えたが、僕はひそかにこれを弁解した。もし不愉快でも妻子のにおいがなお僕の
胸底にしみ込んでいるなら、厭な菊子のにおいもまた永久に僕の心を離れまい。この後と....
「パンドラの匣」より 著者:太宰治
マア坊は今では、つくし以上に僕に好意を寄せているのだという、マア坊のもったいない
胸底をあかしてくれた仕草なのかも知れない。いや、それほど自惚れて考えなくても、と....
「惜別」より 著者:太宰治
の事など、どんなに書かれたって何でも無いけれども、恩師の藤野先生や周さんが、私の
胸底の画像とまるで違って書かれているので読んだ時には、かなりの苦痛を感じた。これ....
「たずねびと」より 著者:太宰治
さんのその心意気を、ありがたく、うれしく思わぬわけではないのですが、しかしまた、
胸底に於いていささか閉口の気もありました。 人道。 私は、お礼の言葉に窮しま....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
らが道徳的意識の最深の動因によりて行動したりと自覚するときである。われらが自己の
胸底に最醇の満足を意識するのはみずから正善の道を蹈めりと天に対して語り得るときで....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
いから、犬の声を変がって、人でも出て来ると成程悪い。 が、何だか今の一言が妙に
胸底へ響いて、時めいた、ために急に元気づいて、 (一奮発|遣附けましょう。) ....
「安吾巷談」より 著者:坂口安吾
。 しかし、忍術物語というものが万人に愛されてきた理由の大いなるものは、人間の
胸底にひそむ「無邪気なる悪」に対する憧憬だ。それは又、だまされる快感と一脈通じる....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
っと力が入った。瞳の色は、飽くまで冷たかったが、微かにせまった眉や、顎のあたり、
胸底の懊悩をじっと押しこらえている感じが、歴々と浮び上った。 姉のそうした表情....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
けで、何か胸に騒ぐ感慨を押えがたかったのは、それもやっぱり異境にさまよう妖しさが
胸底にあったせいであろう。 日本に切支丹の子孫がいる。それは表面仏教徒を装いな....
「地上」より 著者:島田清次郎
「文学の仲間かい」 「そうですよ。学校などで想像されもしない程に自由な、いつも
胸底深くに涙を湛えたような人達の群があるのです。僕はその人達によってどれ程苦しみ....
「少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
海波びょうびょうとして天をひたしている、一|望目をさえぎるなにものもない、ぼくは
胸底深くひめていた計画をはじめて発表した。 「諸君! ぼくはやはり、この島がアメ....
「夜光虫」より 著者:織田作之助
ヤへ来たには違いない。しかし、その二人を連れて来るという思いつきを豹吉に泛ばせる
胸底には、たしかに雪子のことがあった。 一人で来るのにもはや照れていたのだろう....
「金山揷話」より 著者:大鹿卓
私にとって救いだった。また、市岡が微笑をもらしたという事実も、それが彼の行為や、
胸底に抱いていた諦念を解釈する暗示のように思えて、やはり私の息苦しい気持を救った....