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「脂粉〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

脂粉の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
路上」より 著者:芥川竜之介
いって以来、初めて大井を知った俊助は、今日《きょう》まであの黒木綿の紋附にそんな脂粉《しふん》の気が纏綿《てんめん》していようとは、夢にも思いがけなかった。そこ....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
雨も、山々も、あるいはまた高天原《たかまがはら》の国も忘れて、洞穴を罩《こ》めた脂粉《しふん》の気の中《なか》に、全く沈湎《ちんめん》しているようであった。ただ....
義血侠血」より 著者:泉鏡花
々歩み出でたるは、当座の太夫元滝の白糸、高島田に奴元結《やっこもとゆ》い掛けて、脂粉こまやかに桃花の媚《こ》びを粧《よそお》い、朱鷺《とき》色|縮緬《ちりめん》....
右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
《ようか》咲き競う色町だけがものはあって、艶語《えんご》、弦歌、ゆらめくあかり、脂粉の香に織り交ざりながら、さながらにまだ宵《よい》どきのごときさざめきをみせて....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
はやとっ突きの|玉転がし場からも響いてくる。婦人の、キラキラかがやくまっ白な胸、脂粉、歌声、ルーレットの|金掻き棒の音。二人が、内部のキャバレーへはいると、パッ....
雛妓」より 著者:岡本かの子
焼香した。多摩川に沿って近頃三業組合まで発達した東京近郊のF――町は見物人の中に脂粉の女も混って、一時祭りのような観を呈した。葬列は町外れへ出て、川に架った長橋....
猿飛佐助」より 著者:織田作之助
がいつ何時どこで佐助にめぐり会っても見苦しくないようにと、朝夕化粧に念を入れて、脂粉の匂いを漂わしているのがいやでたまらぬ、おまけに三好は鼾のほかに歯軋りがはげ....
旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
です。――だが、行きついたその吉原は、灯影に艶めかしい口説の花が咲いて、人の足、脂粉の香り、見るからに浮き浮きと気も浮き立つような華やかさでした。 「九重さん」....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
彼女の平気な不貞さにも、少しの喜びをも感じなかった。腕や喉《のど》や顔に塗られる脂粉に、深い嫌悪《けんお》を覚えた。芝居がすむとすぐに彼は、彼女に会わずに帰りか....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
腐敗物の傍に沈溺《ちんでき》する。それは友愛以上であり、昵近《じっきん》である。脂粉を塗っていたものもすべて顔を汚す。最後の覆面も引きはがれる。下水道は一つの皮....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
教徒的なもので、だいたいつぎのようなものであった。 「直截《ちょくせつ》に語れ。脂粉と嬌飾《きょうしょく》とをなくして語れ。理解されるように語れ。一群の精緻《せ....
大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
美人はやっぱり好ましいものだ」 義哉はこんなことを想いながら、部屋に残っている脂粉の香に、うっとりと心をときめかした。 思い出して三味線を取り上げると、さっ....
ふるさとに寄する讃歌」より 著者:坂口安吾
した。私は裏町に、油くさい庖厨の香を嗅いだ。また裏町に、開け放された格子窓から、脂粉の匂に噎んでいた。湯垢の香に私はしみた。そして太陽を仰いだ。しきりに帰心の陰....
漱石氏と私」より 著者:高浜虚子
って来ました。今三分一ほどよみかけた。風変りで文句などを飾って居ない所と真面目で脂粉の気がない所が気に入りました。何やら蚊やら以上。 四月一日金 ....
三十年前の島田沼南」より 著者:内田魯庵
色彩に乏しかった。その中で沼南夫人は百舌や鴉の中のインコのように美しく飾り立てて脂粉と色彩の空気を漂わしていた。 この五色で満身を飾り立ったインコ夫人が後に沼....