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「脱兎〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

脱兎の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
偸盗」より 著者:芥川竜之介
太郎の前へ手を合わせて、震えながら頭を下げた。と思うと、乱れた髪もつくろわずに、脱兎《だっと》のごとく身をかわして、はだしのまま、縁を下へ、白い布をひらりとくぐ....
外科室」より 著者:泉鏡花
な自若として、足の指をも動かさざりき。 ことのここに及べるまで、医学士の挙動|脱兎《だっと》のごとく神速にしていささか間《かん》なく、伯爵夫人の胸を割《さ》く....
婦系図」より 著者:泉鏡花
がああだから、自から襟を正すと云ったような工合でね。…… 直の妹なんざ、随分|脱兎のごとしだけれど、母様の前じゃほとんど処女だね。」 と髯を捻る。 ....
深夜の市長」より 著者:海野十三
大した失策もなくて勤め終った。退庁時刻が来ると、僕は帽子とコートを掴むが早いか、脱兎のようにといいたいぐらい素早く門外に走りでた。まごまごしていると、また昨日の....
階段」より 著者:海野十三
を述べて置くに止めたい。 茫然と突っ立っている僕の側を、何処に居たのかミチ子が脱兎の如く飛び出して、螺旋階段を軽業のように飛び上って行ったが、呀ッという間にま....
三角形の恐怖」より 著者:海野十三
出て来るのを感ぜずには居られませんでした。そうなると奇妙にも勇気が出て来て、私は脱兎の如く、駈けつける近所の人の袖の下をくぐって、喫茶店の中に飛び込みました。あ....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
、無理をしちゃ、駄目だよ」 「うん、大丈夫!」 少年は、ニッと笑うと、そのまま脱兎の如く駈け出して行った。 長造が店頭を入ると、そこにはお妻が、伸びあがって....
蠅男」より 著者:海野十三
をソッと当てた。 「これはいかん。皆さん早く逃げて下さい」 そう叫ぶと、帆村は脱兎のように窓際にかけだした。そして川に面した硝子窓をガラリと明けるが早いか、手....
地球盗難」より 著者:海野十三
っていないのを見ると、大変|狼狽してクルリと、踵をかえすなり、扉を開いて、室外に脱兎のように逃げだした。 大隅学士は懸命なる努力を払って、落し穴にも落ちないで....
少年探偵長」より 著者:海野十三
人は、そっと、チャンウーの店の屋根からすべりおりると、ビルディングの非常梯子を、脱兎のごとくかけのぼっていった。 空かける悪魔 春木、牛丸君たちの、少年....
骸骨館」より 著者:海野十三
りだした。もうたくさんだ! 正太はうしろの壁へ、白墨で自分の名前をかきなぐると、脱兎のようにくぐり戸の外へとび出した。 わっはっはっ。骸骨の笑い声が、逃げて行....
今昔ばなし抱合兵団」より 著者:海野十三
きちらすぞ」 「いや、それはお許しねがいたい」 私は、蟇口を片手でおさえると、脱兎のように、博士の研究室を逃げだしたのであった。 ――以上が、金博士に送った....
大使館の始末機関」より 著者:海野十三
と後味のわるさに不機嫌な表情をつくった。 醤は、もう話はすんだと、卓子の下から脱兎のようにとびだすと、部下のつめている部屋へとんでいって、金博士の死骸の取片づ....
火星兵団」より 著者:海野十三
、もったいぶらないで、どんどん先を話したらいいだろう」 「は、つまり、自動車は、脱兎の如く逃走いたしました」 「逃げたとは、変だな。白バイは、何をしていたのか」....
科学時潮」より 著者:海野十三
た死刑囚の一人が見えなくなっていた。彼は恰も此の好機逸すべからずと、死の谷の方へ脱兎の如くに早く駈け出して行ったのだった。多|分始めから脱走する心算だったらしい....