膚寒[語句情報] » 膚寒

「膚寒〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

膚寒の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
太陽の面をなでて通るたびごとに暑気は薄れて、空いちめんが灰色にかき曇るころには、膚寒く思うほどに初秋の気候は激変していた。時雨《しぐれ》らしく照ったり降ったりし....
恋を恋する人」より 著者:国木田独歩
して先へ行く、大友とお正《しょう》は相並んで静かに歩む、夜《よ》は冷々として既に膚寒く覚ゆる程の季節ゆえ、渓流《たにがわ》に沿う町はひっそりとして客らしき者の影....
婦系図」より 著者:泉鏡花
で頤を撫でていたが、車掌のその御注意に、それと心付くと、俄然として、慄然として、膚寒うして、腰が軽い。 途端に引込めた、年紀の若い半纏着の手ッ首を、即座の冷汗....
赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
合子の許に届いたばかりでありました。 十月の声を聞くと、満天下の秋は音信れて、膚寒い風が吹き初めました。赤耀館の庭のあちこちにある楓の樹も、だんだん真赤に紅葉....
ニッケルの文鎮」より 著者:甲賀三郎
に悪いんですもの。 もう一年になるわね。去年のちょうど今頃、そうセルがそろそろ膚寒くなってコレラ騒ぎが大分下火になった時分よ。去年といえば、随分嫌な年で、新聞....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
て、家の息子に道を教わって、甲州街道の方へ往った。 晩秋の日は甲州の山に傾き、膚寒い武蔵野の夕風がさ/\尾花を揺する野路を、夫婦は疲れ足曳きずって甲州街道を指....
煩悩秘文書」より 著者:林不忘
の階下座敷《したざしき》、ちょうど梯子段の裏にあたって、七月とはいえ、山の夜気は膚寒いのに、ぱらりと障子を取り払った大一座だ。 七、八人の、人相風体のよくない....
茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
た。 白玉の露はこれである。 その露の鏤むばかり、蜘蛛の囲に色|籠めて、いで膚寒き夕となんぬ。山から颪す風一陣。 はや篝火の夜にこそ。 五 ....
丹下左膳」より 著者:林不忘
刀身にあかず見入っている。霜をとかした流水がそのまま凝《こ》ったような、見るだに膚寒い利刃《りじん》である。刀を持った鉄斎の手がかすかに動くごとに、行燈の映《う....
街はふるさと」より 著者:坂口安吾
わないわ」 ウットリと甘い夢を見ているようだ。青木は夜気が一そう身にしむような膚寒い思いがした。肚の中で、こまった子供だと舌打ちした。 「京都は落付いた町です....
次郎物語」より 著者:下村湖人
び、それから急に足を早めた。 ちらほら咲き出していた菜種の花が、うす日をうけて膚寒い春風の中にそよいでいた。次郎にはいやにそれが淋しかった。二里あまりの道を、....
次郎物語」より 著者:下村湖人
母さんが大事にかくしていた羊羹の折箱を盗み出して、下駄でふみにじった時の記憶が、膚寒いほどの思いで蘇って来た。彼は、もう仰向けにねていることさえ出来ず、空洞の奥....
顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
や刀槍《とうそう》の威迫《いはく》にはいっこう驚かぬ剛愎な連中も、さすがにどうも膚寒《はださむ》い気持で、その話にだけはなんとなく触れたくなく、諜《しめ》しあわ....
平賀源内捕物帳」より 著者:久生十蘭
深く背中に突立てられたまま胸の上にがッくりと頭を落している。 唐館の中は夏でも膚寒いほどの涼しさだが、殺されてから余程時日が経つと見え、肉はすッかり腐り切って....