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舌の先
「舌の先〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
舌の先の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
心もちがした。
「畜生。人でなし。太郎。やい。極道《ごくどう》。」
まわらない
舌の先から、おのずからこういうことばが、とぎれとぎれに落ちて来る。――真木島《ま....
「子供の病気」より 著者:芥川竜之介
と話しながら、入院の支度《したく》を急いでいる妻や伯母を意識していた。すると何か
舌の先に、砂粒《すなつぶ》に似たものを感じ出した。自分はこのごろ齲歯《むしば》に....
「路上」より 著者:芥川竜之介
れるものと思って、その旨を初子さんまで手紙で通知してしまったんだが。」
俊助の
舌の先には、「そりゃ君の勝手じゃないか」と云う言葉があった。が、その言葉がまだ口....
「土曜夫人」より 著者:織田作之助
った。 苦しそうだ……。 四 口からふき出している泡の間から、だらんと垂れた
舌の先が見え、――茉莉はかすかに唸っていた。 バンドは間抜けた調子で、誰も踊っ....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
らすように返事をしなかったので、彼は縁側へ這いあがって、閉め切ってある障子の紙を
舌の先で嘗《な》めて破って、その穴から内を覗《のぞ》こうとした。それは子供のよく....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ので……。誰でもその店へ行って筆を買いますと、娘達がきっとその穂を舐《な》めて、
舌の先で毛を揃えて、鞘に入れて渡してくれるんです。白い毛の筆を買えば、口紅の痕ま....
「親子」より 著者:有島武郎
父はすぐそばでこう言った。銀行から歳暮によこす皮表紙の懐中手帳に、細手の鉛筆に
舌の先の湿りをくれては、丹念に何か書きこんでいた。スコッチの旅行服の襟が首から離....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
い。 糠雨が降って来たもの。その天窓から顔へかかるのが、塵塚から何か出て、冷い
舌の先で嘗めるようです。 水の音は次第々々に、あるいは嘲り、あるいは罵り、中に....
「アド・バルーン」より 著者:織田作之助
た産婆が私の口を乳房から引き離した時は、もう母の顔は蝋の色になっていて歯の間から
舌の先を出しながら唸っていたそうです。そうして母は死に、阿倍野の葬儀場へ送ったそ....
「この握りめし」より 著者:岸田国士
あつた信濃屋旅館の主人である。ものをいうたびに、欠けた前歯の隙間からチヨロチヨロ
舌の先がみえ、そこから呼吸が漏れるとみえて、発音がはなはだ明瞭でない。 「お早よ....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
い、赤い、艶のいい、明るいものなのだろう。私はそれが飲んでみたくなった。そして、
舌の先を血に触れてみた。味が好かった。だが、憐れむべきその小鳥には、血が少ししか....
「夜光虫」より 著者:織田作之助
はむさぼるように口へ放り込んで、またたく間に食べてしまい、皿についている飯粒を、
舌の先でペロペロと拾った。 男はビールを飲みながら、じっとその容子を見ていたが....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
き含蓄ある説明よりは手取早く呑込む事の出来る記実、噛占めて益々味の出るものよりは
舌の先きで甞めて直ぐ賞翫されるものが読者に受ける。新聞紙の寿命はただ一日であって....
「料理と食器」より 著者:北大路魯山人
料理と食器とは相離れることのできない、いわば夫婦のごとき密接な関係がある。料理を
舌の先に感ずる味だけとみるのは、まだ本当の料理が分らないからである。うまく物を食....
「空中征服」より 著者:賀川豊彦
が、あまりセンチメンタルなものだから泣くことを一生の使命とするといったその言葉が
舌の先でまだ乾かない先に吹き出してしまった。 二人は青春の血に酔うて泣いたり笑....