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艪
「艪〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
艪の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「幻談」より 著者:幸田露伴
けようかなどと考えていました。吉はぐいぐい漕いで来ましたが、せっせと漕いだので、
艪臍《ろべそ》が乾いて来ました。乾くと漕ぎづらいから、自分の前の処にある柄杓《ひ....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
まれるものと見える。 船はもう一個の敏活な生き物だ。船べりからは百足虫のように
艪の足を出し、艫からは鯨のように舵の尾を出して、あの物悲しい北国特有な漁夫のかけ....
「海異記」より 著者:泉鏡花
を置く事あり。もみじのような手を胸に、弥生の花も見ずに過ぎ、若葉の風のたよりにも
艪の声にのみ耳を澄ませば、生憎待たぬ時鳥。鯨の冬の凄じさは、逆巻き寄する海の牙に....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
て乗場の方へ降りた。屋根の低い川船で、人々はいずれも膝を突合せて乗った。水に響く
艪の音、屋根の上を歩きながらの船頭の話声、そんなものがノンキな感じを与える。船の....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
見やしょう」 「そうか。よし、船を廻せ!」 頼正は漕ぎ手に命を下す。 ギーと
艪の軋る音がして、船隊は船首を西南に向けた。若殿のご座船を先頭にして神宮寺の方へ....
「大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
瀞の光景は白い波と泥だらけの八丁だった。 中学時代に、私はこの十津川の九里峡を
艪による船で下ったことがあった。それは晴れた八月だった。途中で夕立に会ったり、船....
「青草」より 著者:十一谷義三郎
乗って海へ出た。弟が櫂を握っていた。兄と彼女とが並んで彼の方を向いて掛けていた。
艪臍の鳴る音と胴が波を噛む音とに遮られて、彼らの会話は弟の耳へは達しなかった。し....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、ぶくぶくと蟹の穴、うたかたのあわれを吹いて、茜がさして、日は未だ高いが虫の声、
艪を漕ぐように、ギイ、ギッチョッ、チョ。 「さあ、お掛け。」 と少年を、自分の....
「蛍」より 著者:織田作之助
いたのだが、登勢が帰ってからの寺田屋の船は八丁堀の堺屋と組合うて船頭八人の八|挺
艪で、どこの船よりも半刻速かった。自然寺田屋は繁昌したが、それだけに登勢の身体は....
「取舵」より 著者:泉鏡花
う事実だと聞くと、長年この渡をやッていた船頭が、もう年を取ッたから、今度|息子に
艪を譲ッて、いよいよ隠居をしようという、この日が老船頭、一世一代の漕納だというん....
「悪因縁の怨」より 著者:江見水蔭
綺麗に見えます」 「遠くでも光って見えるね」と又しても宗匠が口を出した。 「あの
艪を漕ぐ腰ッ振が好う御座いますね」と市助までが黙ってはいなかった。 「あなた方、....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
向けになって舷に肱を懸けたのが調子低く、 佃々と急いで漕げば、 潮がそこりて
艪が立たぬ。 と口吟んだ。 けれども実際この船は佃をさして漕ぐのではない。且....
「黒い人と赤いそり」より 著者:小川未明
けては、水銀の珠を飛ばすように、散っていました。 猟師たちは唄をうたいながら、
艪をこいだり、網を投げたりしていますと、急に雲が日の面をさえぎったように、太陽の....
「粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
乗ろう」 と是から船に乗ると、百姓が繋縄を解いて棹を揚げて、上手の方へ押出し、
艪杭を沾してだん/\と漕ぎ初めたが、田舎の渡船ぐらい気の永いものは有りません。 ....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
りござる。勝浦、法木の島船、小船、浦の真船の出鼻を見れば、姐も妹も皆乗り出して、
艪をおし押し、にまきの先に、おせなおせなとさぶかぜ通れば、凪もいし、かつまを通れ....