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芳しい
「芳しい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
芳しいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
ながら、人を盗み、人をさらって売る暗い稼業《かぎょう》です。女衒とても、もとより
芳しい稼業ではないが、女の前身にかどわかしの暗い影があるというにいたっては、じつ....
「鰊漁場」より 著者:島木健作
けだった。黒土には黄いろい草が萌え、いたやかえで、おおなら、かしわなどの木の芽が
芳しい香りを匂わせていた。源吉はいくどもふりかえっては積丹岳を仰ぎ見た。山裾から....
「茶の本」より 著者:岡倉覚三
愛の詩と時を同じくして起こっているようである。無意識のゆえに麗しく、沈黙のために
芳しい花の姿でなくて、どこに処女の心の解ける姿を想像することができよう。原始時代....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
の水流るゝがために、水を好む野茨も心地よく其の涯に茂って、麦が熟れる頃は枝も撓に
芳しい白い花を被る。薄紫の嫁菜の花や、薄紅の犬蓼や、いろ/\の秋の草花も美しい。....
「伊太利亜の古陶」より 著者:宮本百合子
けれども、彼女は気がすまなかった。彼女は居間に来て榛原の書簡箋を繰りひろげ、
芳しい墨をすり流した。そして徐ろに一昨夜の礼から、筆をかえして今度の慶び、人の親....
「海流」より 著者:宮本百合子
かというと蒼い田沢の青年の顔が、瑛子の大柄な、既に衰えをあらわしながらなお豊満で
芳しい全存在をひっぱりよせるように招くのである。 瑛子はいつしか自分の思いのう....
「美しき月夜」より 著者:宮本百合子
の帽子が、すべすべな頬を斜に掠めて優しい影を投げ、捲毛から溢れた小さい耳朶から、
芳しい頸、胸と何の滞りもなく流れる円滑な線が、レースと、飾帯《サッシ》につけた花....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
涼しく、悚然とする、胸を掻※るような、あの、恍惚となるような、まあ例えて言えば、
芳しい清らかな乳を含みながら、生れない前に腹の中で、美しい母の胸を見るような心持....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
。……満山のもみじの中に、もくりと一つ、道も白く乾いて、枯草がぽかぽかする。……
芳しい落葉の香のする日の影を、まともに吸って、くしゃみが出そうなのを獅噛面で、 ....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
美しかったが、非常に他人と異っているのは、その息がペルシャの薔薇の花園よりもなお
芳しい、一種の馥郁たる香気を帯びていることであった。アレキサンダーは、若い征服者....
「鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
長州で埋めた上に、標の石を建ててくれたという事である。これらは武門の習いとしても
芳しい話だ。そこで我兵は一足退くと勢い如何ともし難く、浮き足となって終に上の庄ま....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
のみごとな果実のように見える……。イタリーの幻覚は肉感的である。汁《しる》の多い
芳しい果実を舌が喜ぶように、人の眼は色彩を喜ぶ。その新しい御馳走《ごちそう》の上....
「大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
手に聳えていた。城下の燈火は見えていたが、そのどよめきは聞えなかった。 穂麦の
芳しい匂がした。蒼白い光を明滅させて、螢が行手を横切って飛んだが、月があんまり明....
「地上」より 著者:島田清次郎
言って階下へ下りて行った。平一郎はシャツ一枚になって絹物の蒲団の中へ潜りこんだ。
芳しい甘美な香料の匂いが、蒲団の中から匂ってくる。彼は電燈を消した。遠くの方で電....
「教育の目的」より 著者:新渡戸稲造
。けれども道楽に学問をすると、そういうことがない。譬えば育の字の上の子が、何だか
芳しい香気がするぞ、美味《うま》そうだ、ちょっと舐《な》めてみようと思って、段々....