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芳烈
「芳烈〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
芳烈の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「闇の絵巻」より 著者:梶井基次郎
ある。石が葉を分けて戞々《かつかつ》と崖へ当った。ひとしきりすると闇のなかからは
芳烈な柚の匂いが立ち騰《のぼ》って来た。 こうしたことは療養地の身を噛むような....
「オリンポスの果実」より 著者:田中英光
》さんに、にこにこ笑いながら掛けて貰ったレイの花は、ひとつでも堪えられないくらい
芳烈《ほうれつ》な香《かお》りを放っていました。ぼくは、その匂《にお》いのなかに....
「文芸の哲学的基礎」より 著者:夏目漱石
から、その辺はよく心得ている。しかし読んでしまっていかにも感じがわるい。悲壮だの
芳烈だのと云う考えは出て来ない、ただ妙な圧迫を受ける。ひまがあったら、この感じを....
「彼岸過迄」より 著者:夏目漱石
ものを、返礼として彼女に与えるには、感情家として僕が余りに貧弱だからである。僕は
芳烈な一樽の清酒を貰っても、それを味わい尽くす資格を持たない下戸《げこ》として、....
「雪の白峰」より 著者:小島烏水
の広告板に、一の宮郷銘酒「白嶺」と読んで、これは「雪の白酒」ではあるまいか、さぞ
芳烈な味がすることであろうと思った、また他で製糸所の看板に、白嶺社とあるのを見て....
「街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
創時代の元気横溢した平民の気象――逃げ水を追《おい》つつまきつつ家を建てた時代の
芳烈な彼等の意気組は、太平が続くに連れて、次第に頽廃的傾向即ちブル気分を帯びて来....
「蟇の血」より 著者:田中貢太郎
した。 「もう、妹も伺いますから、もうすこしいらしてくださいまし」 讓の肉体は
芳烈にして暖かな呼吸のつまるような圧迫を感じて動くことができなかった。女の体に塗....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
寒を物ともせず、ぱっちりと咲いて居る。極の雪の様にいさゝか青味を帯びた純白の葩、
芳烈な其香。今更の様だが、梅は凜々しい気もちの好い花だ。
白っぽい竪縞の銘仙の....
「新版 放浪記」より 著者:林芙美子
重たい風が飄々と吹く度に、興奮した私の鼻穴に、すがすがしい秋の果実店からあんなに
芳烈な匂いがしてくる。
*
(十月×日)
焼栗の声がなつか....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
じていると、暫くして紛《ぷん》と鼻を撲《う》つ酒の香りがしました。それはあまりに
芳烈な清酒の香りであります。 思いがけなく眼をあいて見ると、いくらも離れないと....
「桃のある風景」より 著者:岡本かの子
に当ると鉱物でありながら花の肌になる。寺でありながら花である。死にして生、そこに
芳烈な匂いさえも感ぜられる。私は、心理の共感性作用を基調にするこの歴史上の芸術の....
「『新訳源氏物語』初版の序」より 著者:上田敏
らむらと起るのは好奇心である。あのたおやかな古文の妙、たとえば真名盤の香を※瑰の
芳烈なる薫か、ヘリオトロウプの艶に仇めいた移香かと想像してみると、昔読んだままの....
「重兵衛さんの一家」より 著者:寺田寅彦
一滴を垂らすと、それがぱっと拡がって水は乳色に変わった。飲んでみると名状の出来ぬ
芳烈な香気が鼻と咽喉を通じて全身に漲るのであった。何というものかと聞くと、レモン....
「巴里のキャフェ」より 著者:岡本かの子
唇に熱い珈琲のコップを思い切って押しつけた。苦痛を通して内臓機関に浸み込んで行く
芳烈な匂いは、彼の眼に青とも桃色ともつかぬ二重の蝶を幻覚させた。その蝶が天地大に....
「放浪記(初出)」より 著者:林芙美子
重たい風が漂々と吹く度に、昂奮した私の鼻穴に、すがすがしい秋の果実店からあんなに
芳烈な匂いがする。――一九二八・九―― 濁り酒 十月×日 焼栗の声が....