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「苦もなく〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

苦もなくの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
偸盗」より 著者:芥川竜之介
に、あわただしく部屋《へや》の中へおどりこむと、とっさに老人の右の手をつかんで、苦もなく瓶子《へいし》をもぎはなしながら、怒気を帯びて、一喝《いっかつ》した。 ....
犬と笛」より 著者:芥川竜之介
に合いません。「噛め」はまるで電《いなずま》のように、洞穴の外へ飛び出して、何の苦もなく土蜘蛛を噛み殺してしまいました。 所がまた不思議な事には、それと同時に....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
の中へはいって行った。そうしてまだ誰も持ち上げない巌石の一つを抱くが早いか、何の苦もなくその岩を肩の上までさし上げて見せた。 しかし大勢の若者たちは、依然とし....
或る女」より 著者:有島武郎
ょうね。……頼みますよ」と戯談《じょうだん》らしくいった。 「はあ」葉子はなんの苦もなく親しみの限りをこめた返事をした。その一声の中には、自分でも驚くほどな蠱惑....
或る女」より 著者:有島武郎
頭《ふとう》で葉子にまつわる若者にしたように、葉子の上体を右手に軽々とかかえて、苦もなく細い流れを跳《おど》り越してしまったが、滑川のほうはそうは行かなかった。....
僕の帽子のお話」より 著者:有島武郎
に飛びつこうとしましたら、帽子も僕も一緒になって学校の正門の鉄の扉を何《なん》の苦もなくつき抜けていました。 あっと思うと僕は梅組の教室の中にいました。僕の組....
水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
んでしまったら、これに上越す幸福はないであろう。 真にそれに相違ない。このまま苦もなく死ぬことができれば満足であるけれど、神様がわれわれにそういう幸福を許して....
去年」より 著者:伊藤左千夫
遊し、旅情のさびしみなどはむしろ一種の興味としてもてあそんでいるのだ。それは何の苦もなくいわば余分の収入として得たるものとはいえ、万という金を惜しげもなく散じて....
薬草取」より 著者:泉鏡花
す。 母様の御大病、一刻も早くと、直に、美女ヶ原を後にしました 引返す時は、苦もなく、すらすらと下りられて、早や暁の鶏の声。 嬉しや人里も近いと思う、月が....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
ますとね。」 信也氏はその顔を瞻って、黙然として聞いたというのである。 「――苦もなく開いたわ。お前さん、中は土間で、腰掛なんか、台があって……一膳めし屋とい....
成長が生んだ私の恋愛破綻」より 著者:伊藤野枝
、何を考えねばならないのか、そんな事はまるで知りませんでした。私は夢のように何の苦もなく、考えもなく、好きだと思い、尊敬した男をいっしょになったのです。そして私....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
た。最初は筆の運びが難渋であったが、間もなく器械的運動が勝を占め、一頁又一頁と、苦もなく書き綴られるようになった。 『最初|此等の通信を、スピリチュアリスト紙に....
人魚のひいさま」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
、星のようにきらきらするのみぐすりをみただけで、おじけて引っこみました、それで、苦もなく、森もぬけ、すくも田もとおって、うずまきの流れもくぐってかえりました。 ....
註文帳」より 著者:泉鏡花
を捻るほどなおすべりの可い花色裏。雪まぶれの外套を脱いだ寒そうで傷々しい、背から苦もなくすらりと被せたので、洋服の上にこの広袖で、長火鉢の前に胡坐したが、大黒屋....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
立った萓の茎を抜き取る。滑らかに細長い萓の茎はいいあんばいに煙管の中を通りぬけて苦もなく旧に復し、又彼をして好い工合に煙草を吸わせる。煙草の煙は白い輪を画いて、....