苦吟[語句情報] » 苦吟

「苦吟〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

苦吟の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
とした浅間しい行為を恥じるものの如く、印袢纏氏は、マスクの中で、幾度も、幾度も、苦吟を繰返した。 大通りの軒を境に、火焔と毒瓦斯とが、上下に入り乱れて、噛み合....
灯台鬼」より 著者:大阪圭吉
とわたしは思わず声を出した。 けれども東屋氏は、それには答えないでしきりに苦吟しつづけていたが、やがて語調をあらためて言った。 「ねえきみ……ぼくはまず、....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ちにも、法水は顎を胸につけ、眠ったような形で黙考を凝らしていたが、おそらく内心の苦吟は、彼の経験を超絶したものだったろうとおもわれた。事実まったく犯人のいない殺....
科学者とあたま」より 著者:寺田寅彦
と思われるような尋常|茶飯事の中に、何かしら不可解な疑点を認めそうしてその闡明に苦吟するということが、単なる科学教育者にはとにかく、科学的研究に従事する者にはさ....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
、雲の海を以てしようか、偃松《はいまつ》を以てしようか、雪渓を以てしようか、その苦吟をはじめたらしい。 その時に、雲が濛々《もうもう》と湧いて来たものですから....
鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
事をも真似する事になった。その後この方法は久しく行われていたが、袋を順次に廻せば苦吟家に停滞される憂いがあるから、遂には席の中央へ各題の状袋を投げ出して置いて、....
明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
こが凡人と偉人の差かも知れない。あんまり見上げた差ではない。要するに、海舟先生、苦吟の巻であった。海舟は小指の悪血をしぼり終って、静かに語りはじめた。 「犯人は....
飯田蛇笏」より 著者:芥川竜之介
この頃思い出したように時時句作を試みている。が、一度句作に遠ざかった祟りには忽ち苦吟に陥ってしまう。どうも蛇笏君などから鞭撻を感じた往年の感激は返らないらしい。....
紅白縮緬組」より 著者:国枝史郎
の隙間から射し込んで来て、早出の花売りの触れ声が聞こえる時分になっていたが、彼の苦吟は止まなかった。 「余人ならともかく一蝶と来たら、あれでなかなかの文章家だか....
岷山の隠士」より 著者:国枝史郎
が、李白に敵うべき道理がなかった。 ある日美人の溺死人があった。 で、県令は苦吟した。 「二八誰ガ家ノ女、飄トシテ来リ岸蘆ニ倚ル、鳥ハ眉上ノ翆ヲ窺ヒ、魚ハ口....
三筋町界隈」より 著者:斎藤茂吉
るのともしび」という一首に咏んだ。私のごとき山水歌人には手馴れぬ材料であったが、苦吟のすえに辛うじてこの一首にしたのであった。散文の達者ならもっと余韻|嫋々とあ....
石塀幽霊」より 著者:大阪圭吉
? それでいいのかナ?……駄目駄目。サッパリ理窟が合わんぞ! 蜂須賀巡査は頻りに苦吟しはじめた。 するとそこへ、取調べを終った司法主任の一行が、宏と実の双生児....
光り合ういのち」より 著者:倉田百三
の歌はどう?」 「いいね。あなたがつくったの?」 「ええ」 「待ちたまえ」と私は苦吟して、 「鈴ふりて舞いし処女子胸にもちわれの学びのたぬしくもあるか どうで....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
から押寄せて来て、あたかも稲麻竹葦と包囲された中に籠城する如くに抜差ならない煩悶苦吟に苛まれていた。 二葉亭の日記の数節を引いて、その当時の煩悶焦慮を二葉亭自....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
白竜のような新鮮な波の渦巻と潮※とをつくづくと俯瞰しては、何とか歌にまとめようと苦吟もして見た。 午後になって、左舷の遥かに金華山らしいのが眺められたが、航路....