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苦汁
「苦汁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
苦汁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「癩」より 著者:島木健作
主義者としての彼はまだ若く、その上にいわばインテリにすぎなかったから、実際生活の
苦汁《くじゅう》をなめつくし、その真只中《まっただなか》から自分の確信を鍛え上げ....
「新生」より 著者:島崎藤村
て奈何《いか》ばかりの苦痛を重ねしか。そは今更|云々《うんぬん》致すまじ。最後の
苦汁の一滴まで呑《の》み乾《ほ》すべき当然の責ある身にて候えば。されど孤独により....
「東京八景」より 著者:太宰治
私は悪いものを読んだ。ルソオの懺悔録であった。ルソオが、やはり細君の以前の事で、
苦汁を嘗めた箇所に突き当り、たまらなくなって来た。私は、Hを信じられなくなったの....
「もの思う葦」より 著者:太宰治
争っていた。私、あのとき、凝然とした。 「ブルウタス、汝もまた。」 人間、この
苦汁を嘗めぬものが、かつて、ひとりでも、あったろうか。おのれの最も信頼して居るも....
「渋谷家の始祖」より 著者:宮本百合子
妙にこじれて、焦々しい気分が、電波のように、魂から魂へと伝って、等しく同様の
苦汁を嘗めさせられずにはいないのである。 こんなにして正隆の存在が、今まで相当....
「夢鬼」より 著者:蘭郁二郎
なさい、みんなあんたが」 黒吉は、彼女の口から「虫」といういやな綽名を聴くと、
苦汁を飲まされたような気がして、黙って仕舞った。 「だから、いい事おしえて上げる....
「親友交歓」より 著者:太宰治
ろさまざま、または、友人という形になっている人物に依ってさえも嘗めさせられている
苦汁であるから、それはもう笑って聞き流す事も出来るようになっていたのであるが、も....
「「夜明け前」についての私信」より 著者:宮本百合子
篇実に主観的である。このことは「夜明け前」の文章、描写の方法――貴方が「読み辛い
苦汁のような」と言っていられる文章にもあらわれていると思います。 そしてこの文....
「人間性・政治・文学(1)」より 著者:宮本百合子
たような、機械論にまで逆行して行った。 これらの過程に、民主的な文学者が、心に
苦汁をかみしめながら、日本文学の問題として、文学全野にこの問題を語りかけなかった....
「死刑囚最後の日」より 著者:豊島与志雄
きたら、とそう思ったのだ。 私は憤激と苦々しさとで胸がいっぱいになる気がする。
苦汁の袋がはち切れたような気持だ。死はいかに人を邪悪にすることか。 ....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
に、みんなと調子をあわせていたにすぎなかった。そして、そうした虚偽がさらに新たな
苦汁となってかれの胸の中を流れ、つぎからつぎに不快な気持ちをますばかりだったので....
「探偵小説の芸術性」より 著者:中井正一
が悪寒のごとき修飾であることを見透したるものの明かるき自嘲、そこには無限の反省の
苦汁を裏にたたえるナンセンスを生む苗地が用意されている。一歩を過《あ》やまれば涙....
「フランケンシュタイン」より 著者:シェリーメアリー・ウォルストンクラフト
とだろう! わたしの性質のやさしいところは消え失せ、わたしの内部のあらゆるものは
苦汁と辛酸に変った。わたしは、あんたの家に近づけば近づくほど、復讐の念がますます....
「可能性の文学」より 著者:織田作之助
劣らぬ大嘘つきであることを、ややもすれば忘れるのである。いくたびか一杯くわされて
苦汁をなめながら、なおかつ小説家というものは実際の話しか書かぬ人間だと、思いがち....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
ら北条新蔵は見送っていた。 「……おのれ」 新蔵はつぶやいた。 それと共に、
苦汁をのむような堪忍の顫えが体のなかを廻った。しかし今は―― 「今に見ろ」 と....