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苦熱
「苦熱〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
苦熱の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「渋江抽斎」より 著者:森鴎外
偶然来て泊り込み、それなりに淹留した。夏日袷に袷|羽織を著て恬として恥じず、また
苦熱の態をも見せない。人皆その長門の人なるを知っているが、かつて自ら年歯を語った....
「乳色の靄」より 著者:葉山嘉樹
風機の風下に腰を下した。空気と座席とが、そこには十分にあった。 焙られるような
苦熱からは解放されたが、見当のつかない小僧は、彼に大きな衝撃を与えた。 (あの小....
「札幌まで」より 著者:寺田寅彦
頂点に達したときに一度に霜に殺されるそうである。血の色には汚れがあり、焔の色には
苦熱があり、ルビーの色は硬くて脆い。血の汚れを去り、焔の熱を奪い、ルビーを霊泉の....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
想は、遠く金色の靄《もや》の中に融《と》け込んでゆく大きな湖水のように思われた。
苦熱の一夜を明かした後、足を清冽《せいれつ》な水に洗われ、身体を夏の朝の微風にな....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
していたのか? 暴動はすべてを硝煙のうちに巻き込んでしまっていた。それらの大なる
苦熱は大なる幻を作り出す。彼は自ら問い、自ら憶測し、消えうせたそれらの現実に対し....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
がまず起こり、女性は飛ぶ蝉のように袖をひるがえして行くのである。) 呂宋第一都、
苦熱骨将蘇。 (呂宋第一の都会は、はなはだ熱く、骨も枯れ果てるかと思われた。日暮....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
ない。しかし何等かの方法によって、この死灰の美女に息を吹き返させ自分同様、悩みと
苦熱の血を通わしてやり度い。そう思って富士を見ても容易に自分の感情の働きかけに共....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
。それに伴う心の据わり方が違って来たことももちろんであるが、彼自身は、一本の脚の
苦熱が癒った事実よりも、今朝抱いている心境が、昨日よりたしかに一日育っていること....
「三国志」より 著者:吉川英治
てくれ」 と、その間も、こんこん木槌を振っていた。 荒療治の結果はよかった。
苦熱は数日のうちに癒え、周瑜はたちまち病床から出たがった。 「まだまだ、そう軽々....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
のもとに全力をつくしてきた。わけて登子は帯も解かない窶れを病人と共にして、良人の
苦熱を自分のなかにも喘いでいた。 しかし経過は何の見るべきものもない。患部は朝....
「雪を作る話」より 著者:中谷宇吉郎
室の中で、六華《ろっか》の雪の結晶を作って顕微鏡で覗《のぞ》き暮す生活は、残暑の
苦熱に悩まされる人々には羨《うらや》ましく思われることかも知れない。 雪の結晶....
「大岡越前」より 著者:吉川英治
とって、温かに眠り、身を安楽にしていてくれないかと」 「良人たるお奉行が、今日、
苦熱の釜の中で煮られるような立場にあるのに、妻として、安閑としていられないのは当....