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「苫屋〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

苫屋の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:芥川竜之介
としては、海から聞えた。そうしてまた更に時としては、その山と海との間に散在する、苫屋《とまや》の屋根の上からさえ聞えた。そればかりではない。最後には汐汲《しおく....
婦系図」より 著者:泉鏡花
聞えた勘助井戸を左に、右に千仞の絶壁の、豆腐を削ったような谷に望んで、幹には浦の苫屋を透し、枝には白き渚を掛け、緑に細波の葉を揃えた、物見の松をそれぞと見るや―....
島原の乱」より 著者:菊池寛
をつくった。当時海外折衝の要地であった長崎港を間近に控えた島原天草の地には勿論、苫屋苫屋の朝夕に、密かな祈りがなされ、ひそかに十字が切られた。 大矢野島の益田....
旅日記から」より 著者:寺田寅彦
シナ人の乞食が小船でやって来て長い竿の先に網を付けたのを甲板へさし出す。小船の苫屋根は竹で編んだ円頂で黒くすすけている。艫に大きな飯たき釜をすえ、たきたての飯....
小春の狐」より 著者:泉鏡花
別なる乾坤である。 脊の伸びたのが枯交り、疎になって、蘆が続く……傍の木納屋、苫屋の袖には、しおらしく嫁菜の花が咲残る。……あの戸口には、羽衣を奪われた素裸の....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
なって、人の頭が入交ぜに、空へ突きながら行くかと見えて、一条道のそこまでは一軒の苫屋もない、彼方大崩壊の腰を、点々。 五 「あれ、あの大崩壊の崖の....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
収めず、まだほのぼのと揺ぐのが、渚を籠めて蒸すのである。 漁家二三。――深々と苫屋を伏せて、屋根より高く口を開けたり、家より大きく底を見せたり、ころりころりと....
源氏物語」より 著者:紫式部
た。二条の院へと入道の宮へとの手紙は容易に書けなかった。宮へは、 松島のあまの苫屋《とまや》もいかならん須磨の浦人しほたるる頃《ころ》 いつもそうでございま....
蛇性の婬 」より 著者:田中貢太郎
すから……」 艶かしい声がして女達は舟へあがって来た。そして、※な女の顔がもう苫屋根の下にくっきりと見えた。 「どうもすみません、お邪魔をさせていただきます」....
顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
しても、では、どんな方法で船を去って行ったのか。備えつけの二艘の艀舟《はしけ》は苫屋根《とまやね》の両がわに縛りつけられたままになっている。 それにしても、ど....
百喩経」より 著者:岡本かの子
は近かった。松並木は一重青く浮き出して居た。その幹の間から並んで動いて行く小さい苫屋が見えた。あたたかな砂浜には人が多ぜいいかなごを漁る網を曳いて居た。犬が吠え....
平家蟹」より 著者:岡本綺堂
潮風が吹いて来ると、つづいて雨の来るのが習い。湿れぬうちに戻りましょうか。 呉羽苫屋に雨の漏らぬように、軒のやぶれもつくろうて置かねばなりますまい。 綾の局 召....
深川の唄」より 著者:永井荷風
をはっきり映している。丁度|汐時《しおどき》であろう。泊っている荷舟《にぶね》の苫屋根《とまやね》が往来よりも高く持上って、物を煮る青い煙が風のない空中へと真直....
宇賀長者物語」より 著者:田中貢太郎
一里ばかり往ったところで、小さな野川の水が微白く現われました。川の縁には一軒の苫屋が黙黙として立っておりました。壮い男はその前に立って、どうして川を越したもの....
旃陀羅考」より 著者:喜田貞吉
上人の答えた語を「行状画図」に記して、「念仏を修せん所は貴賤を論ぜず、海人漁人が苫屋までも、皆是れ予が遺跡なるべし」と云われたとある。これまた海人を以て根本から....