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茂みに
「茂みに〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
茂みにの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
がて足もとの岩は、湿った苔《こけ》になった。苔はまた間もなく、深い羊歯《しだ》の
茂みになった。それから丈《たけ》の高い熊笹《くまざさ》に、――いつの間にか素戔嗚....
「富士」より 著者:岡本かの子
風がまた亙る。 翁にはもう何の心もなくなった。手を滑った瓜わらべは逃れて小竹の
茂みに走り込んだ。代りに親猪の怒れる顔面を翁は保与《ほよ》のついた山松の根方に見....
「恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
ったと見え、お互いに助け合いながら、無言のままに急いで来た。 二人が、丸葉柳の
茂みに近づくと、市九郎は、不意に街道の真ん中に突っ立った。そして、今までに幾度も....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
春もやや準備が出来たといった工合に、和やかなものが、晴れた空にも、建物を包む丘の
茂みにも含みかけていた。 かの女と逸作の友人の実業家が招いて呉れたK・S氏夫妻....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
如くに歩み、且つ善く走る。土地の者はそれを※猿とも呼んでいる。 かれらは山林の
茂みに潜んでいて、往来の婦女を奪うのである。美女は殊に目指される。それを防ぐため....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
まる猫はこの苔蒸してひっそりとした坪庭の内を彼らが戯れの場所と化した。一方の草の
茂みに隠れて、寄り添う二匹の見慣れない猫もあった。ふと、お民が気がついた時は、下....
「雪たたき」より 著者:幸田露伴
の御供、城は火をかけて、灰今冷やかなる、其の残った臣下の我等一党、其儘に草に隠れ
茂みに伏して、何で此世に生命生きようや。無念骨髄に徹して歯を咬み拳を握る幾月日、....
「探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
れらは尼が一体何をしているかを見とどけようとして、ひそかにささやき合ってすすきの
茂みに身を隠していると、尼はそんなことに気が付かないらしく、夜露に裳をひたしなが....
「怪しの館」より 著者:国枝史郎
ら鼻白んだ様子である。「争いは止めよう、つまらない」 ここでしばらく沈黙した。
茂みに隠れ、地にへばりつき、聞き耳を立てていた旗二郎、「解らないなあ」と呟いた。....
「銀三十枚」より 著者:国枝史郎
声を上げた。 「時は近づいた! 遣って来た!」 麓の方を指さした。 山葡萄の
茂みに身をひそめ、ユダは様子をうかがっていたが、この時麓を隙かして見た。 打ち....
「地上」より 著者:島田清次郎
は右手の障子を開けた。縁側を越えて、奥庭の広い芝生にあたる日光の流れや、常盤樹の
茂みに薄赤く咲き乱れる桜や、小鳥の囀りが聞える。何というおだやかな静かさであろう....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
いつ、大理石の色に光って、静かにそこに立っていたが、そのまわりには銀碧の色|湿う
茂みに、柘榴の花は口を開いてゆすぶれてい、沢山の蜂のそこに飛んでいるのがありあり....
「粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)」より 著者:三遊亭円朝
侍らしく、逃げ匿れを致さんで尋常に勝負を致せ」 音「王子権現の帰り路に、三河島の
茂みに待受け、鉄砲で父を打殺したに相違有るまい、それのみならず丈助といい合せ、だ....
「はつ恋」より 著者:神西清
の眼に映ったのである。 わたしからほんの五、六歩|離れた所――青々したエゾ苺の
茂みに囲まれた空地に、すらりと背の高い少女が、縞の入ったバラ色の服を着て、白いプ....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
ることは出来ないと思ったからである。荷が無いので著しく足の早い長次郎達は、偃松の
茂みに隠れたかと思うと早くも右に延びて小さな尾根の上に頭だけ出して前を眺めている....