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「茜色〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

茜色の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
三狂人」より 著者:大阪圭吉
とう火葬場の近くで捕えられた。松永博士の推断通り興奮の鎮まった「歌姫」は西の空が茜色に燃えはじめると、火葬場裏の雑木林の隠れ家から例のせつなげなソプラノを唄い出....
聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
裁く権利があるはずですからね。」 その数時間後、二人の同乗した寝台車が、折から茜色の雪解跡をついてB癲狂院の門を潜った。....
旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
ました。 三 折からそよそよと街道は夕風立って、落日前のひと刻の茜色に染められた大空は、この時愈々のどかに冴え渡り、わが退屈男の向う傷も、愈々ま....
うつり香」より 著者:近松秋江
落ちて、淡蒼く晴れ渡った寒空には、姿を没した夕陽の名残りが大きな、車の輻のような茜色の後光を大空いっぱいに美しく反射している。そういう日の暮れてゆく景色を見ると....
黒髪」より 著者:近松秋江
早く眼を覚ますと、窓の外は野も山も、薄化粧をしたような霜に凍てて、それに麗らかな茜色の朝陽の光が漲り渡っていた。雪の深い関ヶ原を江州の方に出抜けると、平濶な野路....
狂乱」より 著者:近松秋江
窓外の山も野も見るから暖かそうな静かな冬の陽に浴して、渓流に臨んだ雑木林の山には茜色の日影が澱んで、美しく澄んだ空の表にその山の姿が、はっきり浮いている。間もな....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
して、藤沢から一日|路、この街道つづきの長者園の土手へ通りかかりましたのが……」茜色の顱巻を、白髪天窓にちょきり結び。結び目の押立って、威勢の可いのが、弁慶|蟹....
死者の書」より 著者:折口信夫
昏くなる頃には、藍の様に色濃くなって行った。見あげる山の端は、横雲の空のように、茜色に輝いて居る。 大山颪。木の葉も、枝も、顔に吹きつけられる程の物は、皆|活き....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
たんだが、やがて、稲の葉が黒くなって、田が溝染めに暮れかかると、次第に褪せて行く茜色を、さながら剥ぎたての牛の皮を拡げた上を、爪立って歩行くような厭な心持がする....
地上」より 著者:島田清次郎
まま戸外へ出た。彼は和歌子の家へゆくつもりであった。戸外はもう夕暮近くで、空には茜色の雲が美しくちらばっていた。彼は明らかに興奮していたが、路の途中まで来ると、....
しゃもじ(杓子)」より 著者:佐藤垢石
く茂り合っている。路の幅は、一間半あるかないか。 永き夏の陽も、西に没して空の茜色も消え去り、行く手のほの暗い東天低く、宵の明星がきらめき光っている。鬱蒼と茂....
わが童心」より 著者:佐藤垢石
貰いであったかも知れぬ。 晩秋の夕|陽が、西の山端に近づくと、赤城の肌に陽影が茜色に長々と這う。そして山|襞がはっきりと、地肌に割れ込んでいるのが、手に取るよ....
穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
時、目をこすりながら屋外に這い出して、東方を見ると、今しも常念は、ほんのりとした茜色の曙光を負いて、独特のピラミッド形を前山の上に突き出し、左ん手で妹子の蝶ヶ岳....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
に流れわたって、ふり仰ぐ真上にあかあかと見渡される。群を抜く鋒杉が見えると思うと茜色に梢を染められ、それがまた非常に鮮かに虚空にうかんで見える。四山の紅葉を振い....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
りの火に薪を添えて顔を洗っていると、金作が米を入れた鍋を持って河原に下りながら、茜色に染った東の空を仰いで、「旦那、今日もいいお天気だぞ」と声を懸ける。さっぱり....