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草の香
「草の香〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
草の香の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「母」より 著者:芥川竜之介
か「どうした?」とか云う事もある。
あたりは庭木の戦《そよ》ぎの中に、かすかな
草の香《か》を蒸《む》らせている。一度ずっと遠い空に汽船の笛《ふえ》の響いたぎり....
「美少女」より 著者:太宰治
も、一度おいでなさい、ということであった。早朝、練兵場の草原を踏みわけて行くと、
草の香も新鮮で、朝露が足をぬらして冷や冷やして、心が豁然《かつぜん》とひらけ、ひ....
「橡の花」より 著者:梶井基次郎
》文庫の庭で忍冬《すいかずら》の高い香を知ったようなときもあります。霊南坂で鉄道
草の香りから夏を越した秋がもう間近に来ているのだと思ったような晩もあります。妄想....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
先生が神祇官判事として在職した当時の記録は、いろいろと役所に残っていた。ちょうど
草の香でいっぱいな故園を訪う心は、半蔵が教部省内の一隅に身を置いた時の心であった....
「家」より 著者:島崎藤村
私も長良川に随いて六七里下りましたと申上げました時に……あの暑い盛りに……こう夏
草の香のする……」 「そうそう、木曾路を行くがごとしなんて、君から書いて寄したッ....
「雪魔」より 著者:海野十三
ちに二人の少年は村をあとにして山のぼりをはじめたのだった。雪はとけていた。春の山
草の香がぷんぷん匂っていた。そして朝日が東の山の上に顔を出すころ、ちょうど青髪山....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
工の屋根で雨露をしのぎ、あたたかい蒲団にくるまるより、天工自然の空の下で、湿気と
草の香に包まれながら地上で眠る方が健康にもよかった。で、暴風雨でない限り、いつも....
「草藪」より 著者:鷹野つぎ
たりを青く染めたように、濶い葉を繁らせていた。 私はおどろくばかり豊富な、土や
草の香いを吸い込んだ。二階から眺めたあの南窓の風物よりも、ここでは地上の多くのも....
「艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
らからに干からびた紫蘇の枝から、紫蘇の実をしごきとる時、手のひらに残ったかすかな
草の香を嗅ぐと、誰でもが何とはなしにそれと言葉には言いつくし難い哀愁を覚えるもの....
「崩れる鬼影」より 著者:海野十三
飛ばしてゆくほどに、とうとう小田原の町を外れて、線路と並行になりました。生ぐさい
草の香が鼻をうちます。 「どうだ、見えないか」と警部は大童です。 「さアまだ見え....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
の緑と赤との愛らしい自転車が置いてあった。 別荘は、しんとしていて、絶えずよい
草の香りのする風が吹き、しきりなしに鳴く郭公の声が遠く近くきこえるばかりであった....
「三筋町界隈」より 著者:斎藤茂吉
み込んで行った。 吉原遊里の話も、ピンヘッド、ゴールデンバット、パイレートの煙
草の香も、負ぐせのついた若鶏の話も、陸奥から出京した少年の心には同様の力を以て働....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
がある。牧歌的な周囲の光景をよく覚えている。家をとり巻く樹立。後ろの小高い丘。牧
草の香のする畜舎。そして和気のみなぎった家庭だった。君の姉妹たちは室内遊戯に実に....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
下の瞼は既に妥協を遂げたらしい。陽炎のようなものが目前をぐるぐる廻っている、快い
草の香が頻りに鼻を襲うて来るまでは覚えていたが。 仮睡の夢からさめて筋を抜かれ....
「黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
る。助七が先登に立ってアカソ、イラクサ、蓬などの丈なす中を押分けて行く。湿っぽい
草の香が鼻から這入って、ツーンと頭へ抜ける。矢張人気の無い所だけあるなと思う。太....