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荒くれた
「荒くれた〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
荒くれたの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
鵞絨《ビロード》のように滑かな空気は動かないままに彼れをいたわるように押包んだ。
荒くれた彼れの神経もそれを感じない訳には行かなかった。物なつかしいようななごやか....
「鰊漁場」より 著者:島木健作
無礼講だった。彼らのうたう追分節や磯節には、ことしの鰊場かせぎも今日限りという、
荒くれた彼らの胸にもわかずにはいない感傷がこもっていた。――旦那はその夜はついに....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
見やりながら、君は丹念に鉛筆を削り上げた。そして粗末な画学紙の上には、たくましく
荒くれた君の手に似合わない繊細な線が描かれ始めた。 ちょうど人の肖像をかこうと....
「親子」より 著者:有島武郎
煙草道具と背負い繩とを腰にぶら下げていた。短い日が存分西に廻って、彼の周囲には、
荒くれた北海道の山の中の匂いだけがただよっていた。 監督を先頭に、父から彼、彼....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
足は、心よりも先に、その方に踏みだしていた。温い湯気の洩れる暖簾をくぐって、僕は
荒くれた二、三人の先客の間に割りこんだ。釜の向うでワンタンを鉢にうつしていた白い....
「光の中に」より 著者:金史良
で居眠りをしている鬚もじゃな小男が頭を彼の方へもたせかけたと見るや、いきなり彼は
荒くれた拳骨を男の頭上へごつんと打ち下ろした。そしていかにも凄い権幕でにらみつけ....
「武装せる市街」より 著者:黒島伝治
を冒してもそれをやった。 やかましい税関をくゞり抜けて、禁制品を持ちこむのは、
荒くれた男よりも、女の方が、――殊にまだどこかあどけない娘の方が、はるかにやりよ....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
ではない。けれどもこゝは聞くだに恐ろしい刑事部屋で、あたりは寂としている。それに
荒くれた刑事達に取巻かれて、髑髏を眼の前につきつけられたのであるから、流石の支倉....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
た手拭を冠り、襦袢肌抜ぎ尻端折という風で、前垂を下げて、藁草履を穿いていた。赤い
荒くれた髪、粗野な日に焼けた顔は、男とも女ともつかないような感じがした。どう見て....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
て、そこにはまた古代の牧場の跡が遠くかすかに光っている。 この山の中だ。時には
荒くれた猪が人家の並ぶ街道にまで飛び出す。塩沢というところから出て来た猪は、宿は....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
中の「眼」から、転ぶように動く涙のようだ。鳳凰山地蔵岳の大花崗岩山は、その峻しい
荒くれた膚を、深谷の空気に、うす紫に染めている。 それからまた針葉樹林を駈け下....
「父」より 著者:金子ふみ子
。ではこの頃彼は何をしていたのだろう。今に私はそれを知らない。ただ私は、いろんな
荒くれた男がたくさん集まって来て一緒に酒を呑んだり、「はな」を引いたりしていたこ....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
れぬが、辻町の目にも咄嵯に印したのは同じである。台石から取って覆えした、持扱いの
荒くれた爪摺れであろう、青々と苔の蒸したのが、ところどころ※られて、日の隈幽に、....
「生死卍巴」より 著者:国枝史郎
た女達の悲鳴や、男達の喚き罵っていた声が、急にこなたへ近寄って来て、すぐに九人の
荒くれた男が、若い女を一人ずつ抱いて、丘の陰から走り出て、こっちに走って来るのが....
「淡紫裳」より 著者:佐藤垢石
上に、道幅が広いので何となく寂寞たる感を催したのであった。 町並みのどこかに、
荒くれた新興都市といった風の、一種親しみにくいところがあるように思ったのであるけ....