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「荒む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

荒むの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
黄村先生言行録」より 著者:太宰治
でない。 私は十銭の木戸銭を払って猛然と小屋の中に突入し勢いあまって小屋の奥の荒むしろの壁を突き破り裏の田圃へ出てしまった。また引きかえし、荒むしろを掻《か》....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
思わない。世には切実な愛情の迫力に依って目覚める人間の魂もある。叱正や苛酷に痩せ荒む性情が却って多いとも云えようではないか。結局かの女の途方も無い愛情で手擲弾の....
修禅寺物語」より 著者:岡本綺堂
は細工場にて、三方に古りたる蒲簾をおろせり。庭さきには秋草の花咲きたる垣に沿うて荒むしろを敷き、姉娘桂、二十歳。妹娘楓、十八歳。相対して紙砧を擣っている。) か....
田舎教師」より 著者:田山花袋
の心のごときか。 三日。 昼より風出でて梢鳴ることしきりなり、冬の野は寒きかな、荒む嵐のすさまじきかな。人の世を寒しと見て野に立てば、さてはいづれに行かん。夕べ....
白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
―一人ずつ飛びこんで、偃松の根許へ這い込んだ、この刹那は、私の頭の中も、暴風雨の荒むように不安であった、油紙の天幕を枝と枝との間に低く張って、四ツ足の人間を、こ....
獄中消息」より 著者:大杉栄
先月の手紙で大体の様子はわかった。さすがに世の中は春だったのだね。しかも春風吹き荒むという気味だったのね。※おうらやましいわけだ。しかし困ったことになったものだ....
水鬼」より 著者:岡本綺堂
んで来て、馬に飲ませる、馬のからだにぶっかける。馭者は心得ているので、どこからか荒むしろのようなものを貰って来て、馬の背中に着せてやる。そんなことをして騒いでい....
夢のお七」より 著者:岡本綺堂
俵のような物が積み込んであった。それでも身を容れる余地は十分にあるので、治三郎は荒むしろ二、三枚をひき出して土間に敷いて、疲れたからだを横たえた。さっきまでは折....
わが童心」より 著者:佐藤垢石
花を混じえて、頬に当たれば腐肉も割れやせん。 私は子供のころ、その痛い嵐が吹き荒む利根川端の崖路を、前橋へ使いに走らせられたことがあったのを記憶している。相生....
蟹満寺縁起」より 著者:岡本綺堂
のかたに大いなる土竈ありて、消えかかりたる藁の火とろとろと燃ゆ。土間には坐るべき荒むしろと、腰をかくべき切株などあり。ほかに鋤鍬の農具あり。打ちかけたる藁屑など....
「黒死館殺人事件」著者之序」より 著者:小栗虫太郎
云っても、過言ではないと思う。 楽聖モッツァルトの埋葬は、霙を交えた北風の吹き荒む、十二月の空の下に行われた。しかし、その葬儀に列なったものは、宮廷合唱長のア....
おりき」より 著者:三好十郎
、そこが麦こきの仕事場になっていて、刈り集められた麦の束が積んであり、その傍には荒むしろが三四枚ひろげられ、その上に牛くさの千歯が据えてある。 小径は仕事場の....
私本太平記」より 著者:吉川英治
油の灯が一つ架かっている。 干鯣か魚屑のにおいだろうか。鼻をつく異臭であった。荒むしろな体を海藻のように横たえている様だった。 帝はと見れば。 乾魚俵に肱....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
の強大なハーレムも遂には分裂する。何れは三、四ヶ月の間だ。十月十一月、寒風の吹き荒むとともに、懐胎したカウの大群集は成長した幼獣、処女獣と南方に向って去り、半成....
ロザリオの鎖」より 著者:永井隆
戸を引けば鼻つき合わす客と亭主だ。玄関番もおかず、名刺もいらぬ。上座も末席もない荒むしろ二枚の一室。さあどうぞこちらへ、いやここで結構などといらざるかけ引きをす....