荒壁[語句情報] »
荒壁
「荒壁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
荒壁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
にか荒廃していた。自然力の風化して行くあとが見えた。紅殻《べにがら》が古びてい、
荒壁の塀《へい》は崩れ、人びとはそのなかで古手拭のように無気力な生活をしているよ....
「吉良上野の立場」より 著者:菊池寛
見つけると、 「ええい!」と、叫んで、突きかけて来た。上野は、後へ下ろうとして、
荒壁へ、どんと背をぶっつけたとたん、太股をつかれて尻餅をついた。 (何の罪があっ....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
た。かえって、それは、心を冷たく打ち挫《ひし》ぎ、まるで枯れ尽した菅《すげ》か、
荒壁を思わす朽樹《くちき》の肌でも見るかのような、妙にうら淋《さび》れた――まっ....
「蕎麦餅」より 著者:田中貢太郎
枕を変えた。 ぶつぶつと言うような声が聞えた。それは隣の室からであった。そこは
荒壁になっていて土の崩れた壁の穴から隣の室の燈火が滲みだしたように漏れて見えた。....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
出たりした。樫の高い生垣で家を囲んだ豪家もあれば、青苔が汚なく生えた溝を前にした
荒壁の崩れかけた家もあった。鶏の声がところどころにのどかに聞こえる。街道におろし....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
が有になった家のあまりの不潔に胸をついた。腐れかけた麦藁屋根、ぼろ/\崩れ落ちる
荒壁、小供の尿の浸みた古畳が六枚、茶色に煤けた破れ唐紙が二枚、蠅の卵のへばりつい....
「写生紀行」より 著者:寺田寅彦
がしかった住宅難の解決がこんなふうにしてなしくずしについているかと思われた。まだ
荒壁が塗りかけになって建て具も張ってない家に無理無体に家財を持ち込んで、座敷のま....
「黒い地帯」より 著者:佐左木俊郎
の上の耕地のようなものであった。雨が降り続けば沼になり、炎天が続くと、粘質壌土は
荒壁のように亀裂が立った。雑草が蔓延った。その根がまた固くて容易に抜けなかった。....
「紫の壜」より 著者:豊島与志雄
っ被さってきて、私を打ち拉ごうとするものがある。検察当局の重圧であろうか。四方の
荒壁の重圧であろうか。然し私にはそれに対抗し得る自信がある。――高いところに、鉄....
「淪落の青春」より 著者:坂口安吾
であると分ったときには、彼も思わず立ちすくんでしまった。 その山道のふちにある
荒壁にコッパをふいて石をのっけた廃屋のような農家を、 「お前はこゝへお嫁にきたの....
「無題抄」より 著者:上村松園
千切れ飛ぶ雲の形に、どうしても掴めなかったものの形を、示されることもあります。
荒壁の乾きぐあい、撒き水の飛沫の形をみて、はたと気づいて、 「ああ、あの形をとっ....
「梟啼く」より 著者:杉田久女
であった。ある時には青田の続いた中をトロとした事も一度や二度ではない。竹藪の中の
荒壁のままの宿屋(村で一軒しかない日本人の宿)に侘びしく寝た夜もあった。丁度新竹....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
べくもない。その小さいことも論外だが、屋根にはタクアン石のようなものを並べ、壁は
荒壁のままである。これ式の農家は秋田県にも少くないが、二階に張りだし窓のような独....
「沼畔小話集」より 著者:犬田卯
も腐れ切った草屋根のところどころ雨漏りのする個所へ煤けきった板など載せて、北側の
荒壁は崩れるままにまかせてあるのだったが、その廃屋同様のM公の家が、どうしたのか....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
牛肉でも、あの牛屋に吊したような赤と白茶の片脚だけのが、内地は百姓屋の軒や周囲の
荒壁にぐるりと掛け連らねた唐辛子、唐黍、大根の如く、いや、それを十層倍にしたぐら....