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落莫
「落莫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
落莫の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
れの一つだったかも知れない。」
こういう不安は、彼の上に、何よりも堪えがたい、
落莫《らくばく》たる孤独の情をもたらした。彼は彼の尊敬する和漢の天才の前には、常....
「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
勤めを離れて、心から求馬のために尽した。彼も楓のもとへ通っている内だけ、わずかに
落莫とした心もちから、自由になる事が出来たのであった。
渋谷《しぶや》の金王桜....
「葱」より 著者:芥川竜之介
の実生活は、何度|今日《きょう》までにお君さんへ迫害を加えたか知れなかった。が、
落莫《らくばく》たる人生も、涙の靄《もや》を透《とお》して見る時は、美しい世界を....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
当座《とうざ》どこへ行っても、当然そこにいるべき母のいない事を見せられると、必ず
落莫《らくばく》たる空虚の感じに圧倒されるのが常であった。その悲しみに比べると、....
「忠直卿行状記」より 著者:菊池寛
であった。 こうした意識が嵩ずるにつれ、彼の奥殿における生活は、砂を噛むように
落莫たるものになって来た。 彼は、今まで自分の愛した女の愛が不純であったことが....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
1 その第三十四番てがらです。 事の起きたのは九月初め。 蕭々
落莫《しょうしょうらくばく》として、江戸はまったくもう秋でした。 濠《ほり》ば....
「転機」より 著者:伊藤野枝
も押し退けた。それはここまでのみちすがらにさんざん私を悩ました、あの人気のない、
落莫とした、取りつき端のないような景色よりも、更に思いがけないものだった。 「ま....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
夫人の人格的な欠点を、洗いざらい見せられたように、眼の前が暗くなり、妻に対して、
落莫たる味気なさを感ずるばかりであった。 五分、十分、新子の来るのが、なぜか手....
「滝田哲太郎氏」より 著者:芥川竜之介
た。滝田君は所謂観魚亭に北を枕に横わっていた。僕はその顔を見た時に何とも言われぬ
落莫を感じた。それは僕に親切だった友人の死んだ為と言うよりも、況や僕に寛大だった....
「安吾人生案内」より 著者:坂口安吾
扉をあけた若い女のアッという叫び声で意識を取り戻したがそれを境として過去の記憶は
落莫とした忘却の彼方に消え自分の名も住所も年も忘れて銀座をさまよっていたのでした....
「宝塚生い立ちの記」より 著者:小林一三
宴会などにはみんな何々夫人として同伴で列席しているが、内実は別居生活で、まことに
落莫たる日を送っている婦人が多い。 日本では、そんなことは存外少ない。そういう....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
ければ、いよいよいけないって時にはならない。ああ、この先の、生のない、声のない、
落莫たる世間……いや、今日はまだそんな事は考えられない……だが明日は、明日はそう....
「中支遊記」より 著者:上村松園
てしまった。或は戦争に巻きこまれぬ前はこうでもなかったのかも知れないが、まことに
落莫としたものである。模様や字様のものの細々と彫っている大きな玉板であるとか、あ....
「斎藤緑雨」より 著者:内田魯庵
る。が、こう世の中が世智辛くなっては緑雨のような人物はモウ出まいと思うと何となく
落莫の感がある。 (大正十四年三月一日補訂)....
「茶美生活」より 著者:北大路魯山人
しむこと十年を誇る者たち、百人を集めて十人の眼利きはむずかしいといえよう。茶道の
落莫を物語るではないか。千人を集めて、五十人さえあやしいであろう。お茶全盛の今日....