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葦簾
「葦簾〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
葦簾の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「狂言の神」より 著者:太宰治
私は、荒れている灰色の海をちらと見ただけで、あきらめた。橋のたもとの望富閣という
葦簾《よしず》を張りめぐらせる食堂にはいり、ビイルを一本そう言った。ちろちろと舌....
「渾沌未分」より 著者:岡本かの子
着な気持になって、化粧の出来上った顔に電球を持ち添えて 「これでは、どう」と窓の
葦簾張りから覗いている貝原に見せた。 「結構ですなあ。さあ出かけましょう。老先生....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
いくらか照れかくしに咽喉を撫ぜ撫ぜ坐っていた。 じりじり暑い西日が、庭木の隙や
葦簾を洩れて、西だけしかあいていない陰鬱な彼の書斎の畳に這い拡がるなかにいて、庸....
「地図にない島」より 著者:蘭郁二郎
飛んでいた。 「もう終りだね、夏も――」 中野五郎は、顔馴染になった監視員の、
葦簾張りのなかに入りながら呟いた。 「まったく。もうこの商売ともお別れですよ……....
「蝱の囁き」より 著者:蘭郁二郎
の儘、横臥場へ行った。横臥場はサナトリウムのはしにあって、ポプラだの藤だのの下に
葦簾を張り、横臥椅子をずらりと並べてあった。そこに横になると、恰度目の前にサナト....
「涼味数題」より 著者:寺田寅彦
物で涼しいものもある。小学時代に、夏が来ると南磧に納涼場が開かれて、河原の砂原に
葦簾張りの氷店や売店が並び、また蓆囲いの見世物小屋がその間に高くそびえていた。昼....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
か。」 「名札はかかっていないけれど、いいかな。」 「あき店さ、お前さん、田畝の
葦簾張だ。」 と云った。 「ぬしがあっても、夜の旅じゃ、休むものに極っています....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
で……」
と口の中でつぶやいたが、それらしい影も見えないので、またしょんぼりと
葦簾《よしず》のかげへはいった。
階溜まりに鳩がおりているきり、参詣の人もない....
「娘煙術師」より 著者:国枝史郎
そうして二、三冊の易の書物――それらを載せた脚高の見台、これが店の一切であった。
葦簾も天幕も張ってない。見台には白布がかかっていて、「人相手相家相|周易」などと....
「つづれ烏羽玉」より 著者:林不忘
まどう》から笠神明《かさしんめい》へかけて、二十軒建ちならぶ江戸名物お福の茶屋、
葦簾《よしず》掛けの一つに、うれし野と染め抜いた小旗が微風《そよかぜ》にはためい....
「食堂」より 著者:島崎藤村
前に、桜やアカシヤが影を落している静かな一隅が、お三輪の目ざして行ったところだ。
葦簾で囲った休茶屋の横手には、人目をひくような新しい食堂らしい旗も出ている。それ....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
下へ差しかかると、もうその時は車軸《しゃじく》を流す真物の土砂降りになっていた。
葦簾《よしず》を取り込んだ茶店へ腰かけて、しばらくは上りを待ってみたものの、降る....
「木綿以前の事」より 著者:柳田国男
して機嫌を取っているのだろうと思ったが、よく見ると少しいては一つの座を切り上げ、
葦簾を隔てた隣の店へ移って行く。そうしてそこにも同じ年配の女性が、まだ幾人か去来....