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蒼然
「蒼然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蒼然の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「毛利先生」より 著者:芥川竜之介
・コオトで、これは過去において黒かったと云う事実を危く忘却させるくらい、文字通り
蒼然たる古色を帯びたものであった。しかも先生のうすよごれた折襟には、極めて派手な....
「路上」より 著者:芥川竜之介
は何気《なにげ》なく頭を擡《もた》げた。擡げると彼の眼の前には、第八番教室の古色
蒼然たる玄関が、霧のごとく降る雨の中に、漆喰《しっくい》の剥《は》げた壁を濡らし....
「外科室」より 著者:泉鏡花
《おくさま》、どうぞ、御堪忍あそばして」と優しき腰元はおろおろ声。 夫人の面は
蒼然《そうぜん》として、 「どうしても肯《き》きませんか。それじゃ全快《なお》っ....
「聖書」より 著者:生田春月
ーサア・シモンズの詩集の下から引出して、僕の手に渡してくれた。見るといかにも古色
蒼然たるものだ。全部厚革で、製本はひどく堅牢だ。革はところどころはげたり、すりむ....
「演技指導論草案」より 著者:伊丹万作
があやしい。これは自分の天性の劣弱なことにもよるが、もっと大きな原因は我々が古色
蒼然たる言論蔑視の倫理に締めつけられてきたことにある。いわく「ことあげせず」。い....
「少年探偵長」より 著者:海野十三
館の由来を知っているものはない。 爾来、幾星霜、風雨にうたれたヘクザ館は、古色
蒼然として、荒れ果ててはいるが、幸いにして火にも焼かれず、水にもおかされず、いま....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
沈めた。その癖、たった今、思わず、「あ!」といったのは誰だろう。 いま辻町は、
蒼然として苔蒸した一基の石碑を片手で抱いて――いや、抱くなどというのは憚かろう―....
「湯女の魂」より 著者:泉鏡花
ど好い年増なんでございますよ。それが貴方、着物も顔も手足も、稲光を浴びたように、
蒼然で判然と見えました。」 「可訝しいね。」 「当然なら、あれとか、きゃッとか声....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
そうに老人をと思って癪に障ったから、おいらあな、」 活気は少年の満面に溢れて、
蒼然たる暗がりの可恐しい響の中に、灯はやや一条の光を放つ。 三十七....
「初雪」より 著者:秋田滋
重ねるにつれてその肉体から温かみが失せてゆくものだが、それと同じように、この古色
蒼然たる屋敷も、幾世紀かの年月を閲するうちに、いつしか、つめたく冷え切ってしまっ....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
で父親は道ばたに出て、声を限りに呼んだ。 「ジャン! ジャーン!」 もう暮色が
蒼然とあたりに迫っていた。夕靄が烟るように野末にたち罩め、ものの輪廓が、ほの暗い....
「夫人利生記」より 著者:泉鏡花
ない。 この写真が、いま言った百人一首の歌留多のように見えるまで、御堂は、金碧
蒼然としつつ、漆と朱の光を沈めて、月影に青い錦を見るばかり、厳に端しく、清らかで....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
子。色がいいから紅茸などと、二房一組――色糸の手鞠さえ随分糸の乱れたのに、就中、
蒼然と古色を帯びて、しかも精巧目を驚かすのがあって、――中に、可愛い娘の掌ほどの....
「涸沢の岩小屋のある夜のこと」より 著者:大島亮吉
だった。そして偃松の生枝をもやしては、ささやかな夕餉を終えた時分には、すでに夜は
蒼然と自分のまわりをとりかこんできていた。それはまたすばらしくいい夜だった。すて....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
軽風平波、右方に一帯の連山を望みつつ南進す。その山二千尺前後の高さにして、その色
蒼然たり。 暁払。 (あかつきに朝もやを打ち払うようにしてせまい海を出るとき、帆....