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蔀
「蔀〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蔀の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
けしきはない。まして、両側に建て続いた家々は、いずれもしんと静まり返って、その板
蔀《いたじとみ》や蒲簾《かますだれ》の後ろでは、町じゅうの人がことごとく、死に絶....
「鼻」より 著者:芥川竜之介
せいであろう。まだうすい朝日に、九輪《くりん》がまばゆく光っている。禅智内供は、
蔀《しとみ》を上げた縁に立って、深く息をすいこんだ。
ほとんど、忘れようとして....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
ます。その時の悲しさ、恐ろしさ、勿体《もったい》なさ――今になって考えましても、
蔀《しとみ》に迷っている、護摩《ごま》の煙《けぶり》と、右往左往に泣き惑っている....
「袈裟と盛遠」より 著者:芥川竜之介
は。」
袈裟《けさ》は、燈台の火を吹き消してしまう。ほどなく、暗の中でかすかに
蔀《しとみ》を開く音。それと共にうすい月の光がさす。
(大正七年三月)....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
五十一 日盛りの田畝道には、草の影も無く、人も見えぬ。村々では、朝から
蔀を下ろして、羽目を塞いだのさえ少くない。田舎は律義で、日蝕は日の煩いとて、その....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
雲の中に陰気に黒い。両隣は引手茶屋で、それは既に、先刻中引けが過ぎる頃、伸上って
蔀を下ろしたり、仲の町の前後を見て戸を閉めたり、揃って、家並は残らず音も無いこの....
「春昼」より 著者:泉鏡花
それまでも、何かそれらしい音はしたが、極めて散漫で、何の声とも纏まらない。村々の
蔀、柱、戸障子、勝手道具などが、日永に退屈して、のびを打ち、欠伸をする気勢かと思....
「木の子説法」より 著者:泉鏡花
は、よくこの店を覗いたものです。――横なぐりに吹込みますから、古風な店で、半分|
蔀をおろしました。暗くなる……薄暗い中に、颯と風に煽られて、媚めかしい婦の裙が燃....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
―絵馬の裡へ、銑吉を上らせまいとするのである。 第一|可恐いのは、明神の拝殿の
蔀うち、すぐの承塵に、いつの昔に奉納したのか薙刀が一振かかっている。勿論誰も手を....
「化銀杏」より 著者:泉鏡花
間に住居いて、店は八畳ばかり板の間になりおれども、商売家にあらざれば、昼も一枚|
蔀をおろして、ここは使わずに打捨てあり。 往来より突抜けて物置の後の園生まで、....
「死者の書」より 著者:折口信夫
。この家も世間どおりに、女部屋は、日あたりに疎い北の屋にあった。その西側に、小な
蔀戸があってになるように出来ている。そうして、其内側には、夏冬なしに簾が垂れてあ....
「『新訳源氏物語』初版の序」より 著者:上田敏
、田舎のかよひも思ひがけねば、いと心|細けれ、北殿こそ聞き給へや」とあるには、半
蔀几帳の屋内より出でて、忽ち築地、透垣の外を瞥見する心地する。華かな王朝という織....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
場格子の内に、掛硯の上で帳面を読むのはお夏で、釣洋燈は持って来て台の上、店には半
蔀を下してある。 「十銭、十八銭、四十銭、五十八銭。」 「旨えもんですぜ。」 「....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
失せるに就いてか、」 「つい四五日前、町内の差配人さんが、前の溝川の橋を渡って、
蔀を下した薄暗い店さきへ、顔を出さしったわ。はて、店賃の御催促。万年町の縁の下へ....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
助の置物という処が、硝子箱の菊慈童と早がわりをしているんだ。……これは驚いた。半
蔀の枢戸が総硝子になって、土間に黄菊と白菊か。……大輪なのが獅子咲、くるい咲と、....