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「蔽う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

蔽うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
邪宗門」より 著者:芥川竜之介
あの女菩薩《にょぼさつ》の画像《えすがた》を親子のものの頭《かしら》の上に、日を蔽う如くさしかざすと、 「天上皇帝の御威徳は、この大空のように広大無辺じゃ。何と....
妖婆」より 著者:芥川竜之介
妙にじめじめしていました。その上隣の荒物屋との境にある、一抱あまりの葉柳が、窓も蔽うほど枝垂れていますから、瓦にさえ暗い影が落ちて、障子《しょうじ》一重《ひとえ....
婦系図」より 著者:泉鏡花
早瀬さん、私、私じゃ、」 と声が消えて、小芳は紋着の袖そのまま、眉も残さず面を蔽う。 「いや、愛想の尽きた蛆虫め、往生際の悪い丁稚だ。そんな、しみったれた奴は....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
のであるが、本能的生活の葛藤にあっては、智的生活の生んだ規範は、単にその傷を醜く蔽う繃帯にすらあたらぬことを知るだろう)。その時精神は精神ではなく、肉慾は肉慾で....
海神別荘」より 著者:泉鏡花
と、ものなき竜馬の周囲を呵す。) 美女 まあ、情ない、お恥しい。(袖をもって面を蔽う。) 女房 いえ、貴女は、あの御殿の若様の、新夫人でいらっしゃいます、もはや....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
落して、 「雪叟が鼓を打つ! 鼓を打つ!」と身を揉んだ、胸を切めて、慌しく取って蔽うた、手拭に、かっと血を吐いたが、かなぐり棄てると、右手を掴んで、按摩の手をし....
海の使者」より 著者:泉鏡花
は、一面の蘆で、出揃って早や乱れかかった穂が、霧のように群立って、藁屋を包み森を蔽うて、何物にも目を遮らせず、山々の茅薄と一連に靡いて、風はないが、さやさやと何....
女客」より 著者:泉鏡花
、背後向きに机に寄った当家の主人に、一枚を齎らした。 「憚り、」 と身を横に、蔽うた燈を離れたので、玉ぼやを透かした薄あかりに、くっきり描き出された、上り口の....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
ってあった。 行燈が化けると云った、これが、かがみのつもりでもあろう、が、上を蔽うた黒布の下に、色が沈んで、際立って、ちょうど、間近な縁台の、美しい女と向合せ....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
刎ねて、真中の位置をずれて、ツイと軒下を横に離れたが。 弱い咳をすると、口元を蔽うた指が離れしなに、舌を赤く、唇をぺろりと舐めた。 貸本屋の女房は、耳朶まで....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
間は些しもないのであるから、驚いて、ハタと夫人の賜物を落して、その手でじっと眼を蔽うた。 立花は目よりもまず気を判然と持とうと、両手で顔を蔽う内、まさに人道を....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
に返ったような思いがした。 嫗の言が渠を魅したか、その蘆の葉が伸びて、山の腰を蔽う時、水底を船が漕いで、岡沙魚というもの土に跳ね、豆蟹の穂末に月を見る状を、目....
狂人日記」より 著者:秋田滋
きどきした。ああ、いつかの小鳥の心臓! 私は子供の死体を溝に投げ込んでそれを草で蔽うた。 それから、私は家に帰り、食事をした。食事は美味かった。なんて他愛のな....
瓜の涙」より 著者:泉鏡花
なのが知れて、隈なき日当りが寂寞して、薄甘く暖い。 怪しき臭気、得ならぬものを蔽うた、藁も蓆も、早や路傍に露骨ながら、そこには菫の濃いのが咲いて、淡いのが草ま....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
ある。そうしたことが知れるとその騒々しさは忽ち静寂な趣に変ってゆく。仰いで大空を蔽う松葉を眺めると、その間に小さな豆のような小禽が囀りながら虫をあさっている。豆....